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尾崎放哉。尾をふつてくれる。自由律俳句(八)

今回は、尾崎放哉(おざき・ほうさい、明治十八年・1885年~大正十五年・1926年、鳥取市生まれ)の自由律俳句を感じとります。出典から、私の心に特に響いた句を選び、似通うものを感じた句にわけ、◎印の後に私の詩想を記します。

1.自分が投げ込まれ置かれた世界を受けとめる句
いずれも彼にとっての世界、世界との距離感が響いている句で、受けとめ感じる、受動性を感じる句です。

  仏体にほられて石ありけり
◎寺を移り住んだ彼だからこその強さを感じます。彫られた仏像も石としてあること。ただ祈りを否定しているわけではなく、信仰、人間についての想いが、さまざまに沸き拡がる句です。
「ありけり」の文語体に微かな修辞があることで、調べを生み、散文ではない詩歌、句にしています。

  鳥がだまつてとんで行つた
◎情景をありのまま描写しただけのようで、鳴くことが自然な鳥が「だまつて」いた姿を捉えていることで、作者の心理状態をも感じさせます。
二つの促音「っ」の響きあいに微かな修辞があることで、調べを生み、散文ではない詩歌、句にしています。

  大雪となる兎の赤い眼玉である
◎色彩のコントラストが強い、雪の白とウサギの眼の赤が浮き上がる、絵画のような句です。
「なる」と「ある」の響きあいに微かな修辞があることで、調べを生み、散文ではない詩歌、句にしています。

  鳩に豆やる児が鳩にうづめらる
◎幼児と鳩を生き物として等しく見つめながらも、人間味と優しいユーモアが沁みてきます。
「に、やるyARU」と「に、らるrARU」の響きあいに微かな修辞があることで、調べを生み、散文ではない詩歌、句にしています。

  犬よちぎれるほど尾をふつてくれる
◎なつく犬に「尾をふってくれる」と、感謝している心に、生きものへの優しさと、寂しさが響いています。
「犬よ」と呼びかける言葉の強さに切れ字に似た間を生む微かな修辞があることで、調べを生み、散文ではない詩歌、句にしています。母音のオO音とウU音の織りなされる流れも音楽的です。

  歯をむきだした鯛を威張つて売る
◎日常を俗に生活するとき不感性になっている、他の生き物を食べて生きる悲しみと、万物の長のようにふるまう人間に対する嫌悪感も滲んでいると感じます。修辞を削ぎ落とした散文に近い句であることが、詩句の内容の虚飾を削ぎ落とすことと合っているから逆に、句としての強さを感じます。

  笑ふ時の前歯がはえて来たは
◎幼児の生えかけの前歯に、健やかに成長していくことへの感動と祈りが込められていてヒューマニズムを感じます。前歯を「笑ふ時の」と形容していることで、子どもの笑顔の眩しい歯の白さが眼に浮かびます。最後の「きたは」と自分に言い聞かせる語尾に、静かな感動の余韻が生まれています。

  とんぼが淋しい机にとまりに来てくれた
◎この句も放哉らしく「来てくれた」と心を響かせます。そのままの心境の句に近い分、修辞は「とんぼ」「とまりに」の「と」の呼応以外なく、散文に限りなく近づけています。

  山は海の夕陽をうけてかくすところ無し
◎情景が鮮やかに浮かぶ絵画的な句。句末の「無し」の言い切る強さが、調べを生み、散文ではない詩歌、句にしています。

  なんと丸い月が出たよ窓
◎病床で窓の月を詠んだ句。死を覚悟した意識の清澄さを感じます。
「なんとtO」「出たよyO」「まどdO」のオO音が押韻を感じさせます。冒頭の驚きそのものの詩句「なんと」と、最後に倒置し独立性を強めた短い二音の体言(名詞)「窓」をおき、心の感動の強さを響かせています。

 次回も尾崎放哉の句を感じとります。

出典『現代句集 現代日本文学大系95』(1973年、筑摩書房)

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プロフィール

高畑耕治

Author:高畑耕治
Profile:たかばたけ こうじ
1963年生まれ大阪・四條畷出身 早大中退 東京・多摩在住

詩集
「銀河、ふりしきる」
2016年イーフェニックス
「こころうた こころ絵ほん」2012年同上
「さようなら」1995年土曜美術社出版販売・21世紀詩人叢書25
「愛のうたの絵ほん」1994年同上
「愛(かな)」1993年同上
「海にゆれる」1991年土曜美術社
「死と生の交わり」1988年批評社

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