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歌の韻律美と口語自由詩

 萩原朔太郎の『恋愛名歌集』を通して、日本語の歌の韻律美を知り、より深く聴きとろうと、4回にわたり試みました。初回冒頭に書いたとおり、私は日本語で表現する詩人の一人として、その美しい韻律を作品で響かせたいといつも思っています。考察のまとめとして、「短歌の韻律美を口語自由詩にどのように生かせるか」を私なりに考えます。

● 日本語の歌の魅力
 まず、各回でみつけた日本語の歌の魅力は次のように、豊かなものでした。

1.音数律は呼吸そのもの、語数のリズムと間(ま)。
☆ これが日本語の息づかいです。
2.頭韻や脚韻やの柔軟自由な押韻の美しい調べ。
☆ これが、定型枠で固まらない、感性がきらめく日本語の音色です。
3.言葉の語感を生かした音象と、想(意味と表象)が不分離の世界を生み出し伝えられる。
☆ 歌謡でも楽曲でも散文でもできず、詩でこそできること、音色と色調と想の融和が、詩歌という芸術のいのちです。
4.短歌の音律構成の要(調和・反響・流れのある音の修辞)
 ① 最強声部の音(初頭音、句切れのあとの起頭音)の対韻(陽陽、陽陰、陰陰、陰陽)。
 ② 同音(母音、子音とも)の繰り返しによる快さ(頭韻、重韻、脚韻)。
 ③ 対比的な音で互いを際立たせる(開唇音、閉唇音)。
 ④ 音の流れの変化(転調、緩急)をつける。
日本語の音の織物の美しい模様は、調和と反響と流れとして織り成されています。

 このように、日本語の、息づかいと、音色と、色調と想が、織りなされた流れのうちに、響きあい光りあっている姿が、日本語の詩歌で、それは心の揺れ動き、感動そのものだとも言えます。
 萩原朔太郎は言います、「抒情詩の生命は音楽にあり」。詩は言葉の芸術、だからこの言葉は時代を超えて変らない真実だと私は考えています。

● 短歌の韻律美を口語自由詩にどのように生かせるか

 このように、日本語による最高の韻文美を響かせてきた短歌、歌を見つめなおすと、私はここにあげた言葉に対する感性に基づいた、その音の修辞の素晴らしさは、ほとんどそのまま、口語自由詩に生かせるものだ、と考えています。
 三十一文字という外枠が、韻律美の重要な源であることは忘れてはいけませんが、その外枠の中での表現である短歌を選ぶか、外枠を取り外した表現である口語自由詩を選ぶかは、個人の選択です。
 私は口語自由詩を選びました。選びつつ、日本語で表現する者は、言葉の音楽の構成、言葉の響きに対する感性、磨き上げられた音の修辞と技術は、この歌の豊かな流れから学ぶのがよいと、考えています。その流れを受け継いで、三十一文字の枠をはずしても、美しい日本語の詩歌が響くことを、この時代の情操を表現できることを、新しい作品を創り豊かな流れに注ぎ込むことで伝えたいと願っています。

● 創作の動機と修辞の技術

 修辞や技巧について考えるときに、次のことは大切だと思っていますので、覚書として補足します。
 私は、詩歌において一番大切なものは「創作の動機」だと思います。書かずにはいられない、伝えずにはいられない思いがあり、言葉がその思いから生まれ出ているかどうか、です。
 そして、その思いは詩でしか伝えられないと感じ、詩として表現することを選んだのなら、その時一番大切なのは、言葉の美しい音楽とする技巧、音の修辞で、美しいと感じられる織物にまで織りあげることです。
 このときには動機の切実性にもう甘えてはいけないと思います。自分でない他者にどうしても伝えたいという切実さは、言葉の音楽を織りあげる技巧と修辞にこそ、懸命に努力して注ぎこむものだと思います。
 このことは、詩も、音楽も舞踏も絵画もどの芸術にも共通して言える、あたりまえのことで、修練で得た技術がないものは芸術ではなく、不特定の他者に感動を伝える力は弱い、ある瞬時の表現だと思います。
 例えば、好きな人への心を込めたラブレターがだめだと言っているのではありません。ある特定の人への思いの切実さは表現の巧拙など関係なく吐露する情熱こそが必要で技術なんていりません。そのようなその一瞬だけの生の言葉に強く共感し感動することがあります。ただそれは不特定の他者に、芸術として表現し、時代を超えて伝えることをめざし、永遠を思う、芸術とは、また別の表現だと私は考えています。
 その一瞬の表現が、芸術としての表現と響きあい重なりひとつのものとなり、不特定の他者に、時代を超えて、響き、伝わると良いのに、と思いつつ。芸術という看板より大切なものは、生きている人間の生の思い、表現の動機だけだと、思いつつ。できることは、したいことは、生き、愛し、歌い、伝えること、それだけです。

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プロフィール

高畑耕治

Author:高畑耕治
Profile:たかばたけ こうじ
1963年生まれ大阪・四條畷出身 早大中退 東京・多摩在住

詩集
「銀河、ふりしきる」
2016年イーフェニックス
「こころうた こころ絵ほん」2012年同
「さようなら」1995年土曜美術社出版販売・21世紀詩人叢書25
「愛のうたの絵ほん」1994年同
「愛(かな)」1993年同
「海にゆれる」1991年土曜美術社
「死と生の交わり」1988年批評社

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