前回に続き、
詩人・細野幸子の詩をみつめます。今回は第3
詩集『あの日の風に吹かれて』(2002年、あぜん書房)に咲いている、私がとても好きな詩の花にします。
詩「あの日の風に吹かれて」を私が好きなのは、
愛の詩だからです。
「わたしがいちばんつよく愛されていた」という詩句はとても真実で、母親の気持ちですが、子どもの気持ちを感じとることができる母親だけが言葉にできる母親の気持ち、ほとんど「つよく愛しあっていた」と同じ強さと温かさがあふれている詩句です。
あふれだした思いが織りなしてゆく二連は、冒頭の
「まるい地球のてっぺんで」という詩行で、詩の世界をまず、宇宙の大きさにまで広げます。
宇宙の中の小さな星のひとりのぼうや。
ぼうやをつつむのは、多くの人の胸のうちに隠されている優しさ、海のように深く広がりのあるゆたかな愛だと、美しい次の詩句で鮮やかに浮かびあがらせます。
「せかいじゅうのおかあさんがへんじをする」
もちろん、この地上では、ぼうやがよんでも、振り返らない、無視する、うるさいと黙らせようとする、虐げてしまう人さえ、いま大勢いるのを知っているからこそ、作者が詩のシャボン玉に映し見せてくれる夢、願いの世界です。
作品は、三連で願いそのもの、祈りに近い歌にまで、美しく高められてゆきます。
詩は願い、美しいひかり、歌となって、心に宿ります。耳を澄ませば、いつでも聴きとることができる、きえることない愛の歌だと、この作品は教えてくれます。
あの日の風に吹かれて
細野幸子どこかでぼうやが
「ママー」ってよぶと わたしは
つい立ちどまり ふりむいて
いそいそとへんじをしてしまう
わたしがいちばんつよく愛されていた
あの日の風に吹かれて
――なあに
まるい地球のてっぺんで
こえをはり上げぼうやがひとり
「ママー」ってよぶと
せかいじゅうのおかあさんがへんじをする
ひまわりみたいにくびをかしげて
――なあに
太陽のような声が
声が……声が
きんいろにすきとおり
風に吹かれて
ぼうやのうえにふってくる
次回も、細野幸子の詩をみつめ詩想をしるします。
☆ お知らせ ☆
『詩集 こころうた こころ絵ほん』を2012年
3月11日、
イーフェニックスから発売しました。A5判並製192頁、定価2000円(消費税別途)しました。
イメージング動画(詩・高畑耕治、絵・渡邉裕美、装丁・池乃大、企画制作イーフェニックス・池田智子)はこちらです。絵と音楽と詩の響きあいをぜひご覧ください。
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