東京の下町、隅田川のほとりの芭蕉記念館を今年の4月に初めて行くことができました。
松尾芭蕉(まつお・ばしょう、1644~1694年)が暮らしていた場所のすぐ近くに建てられています。河口近い隅田川の水量はとても豊かに波打っていて、ゆりかもめが気持ちよさそうに風に乗っていました。
これまで近づかなかった
俳句の世界を感じとりなおそうと最近
『奥の細道』を読み返したところでもあり、また彼と与謝蕪村、小林一茶から読みなおそうと考えていることもあり、とても楽しみでした。
近くにある
深川江戸資料館を先に訪ね、江戸時代の庶民の暮らし、長屋住まいや井戸端、八百屋、茶屋、屋台などを見ながら館員さんの当時の庶民の生活についての丁寧な解説を伺うことができたので、なおさら芭蕉を親しく感じました。
芭蕉記念館では、折りよく、常設展示に加え企画展「近現代の作家と文化人~詩歌の世界~」も催されていました。
私が訪ねてほんとに良かったなと感じたのは、文学者たちが自分で筆をとり直接書いた、直筆の俳句や手紙の実物の文字を見ることができたことです。松尾芭蕉の手紙や短冊、「奥の細道」直筆本の複写、
夏目漱石、尾崎紅葉、芥川龍之介、永井荷風、谷崎潤一郎などの俳句、短歌の短冊に、作者の息遣いを感じ、個性がにじんでいて、感動しました。
毛筆で流暢に、また癖の強い字体で、書き流された作者ごとに異なる文字のかたちを感じると同時に、その日本語の文字を読み取れないことを私はとても残念に思い、前から感じつつできずにいたことですが、古典の直筆を読めるようになろうと思いました。
本屋で探し見つけた次の二冊の本には、古典から近現代までの、歌人、作家の直筆写真がたくさんあり、とても楽しく学ぶことができました。
藤原定家、高村光太郎の直筆などを見ると、心の深みにある文学を愛する思いを揺り動かされ、私も良い作品を生めと、励まされている思いがします。
たとえば、藤原定家は和歌のイメージから繊細な薄墨のかすれた細い字体を思い浮かべますが、直筆は、太く濃く幅のある四角ばった字体(書道でそのアクの強さから流派が生まれたそうですが)で、驚きます。
一方、芥川龍之介の直筆は、彼の神経がそのまま文字になったように私には見えました。文字は人を表すのでしょうか。とても興味深く感じます。
芭蕉の『奥の細道』や俳句の短冊の直筆は、素人目にも、精神性のある、流れと変化のある、
書の美というものを教えてくれます。
『入門 日本語のくずし字が読める本』(角田恵理子:つのだ・えりこ、2010年、講談社)。
『実践 日本語のくずし字が読める本』(角田恵理子:つのだ・えりこ、2011年、講談社)。 とても良い本です。おかげでようやく、この本にある一覧表と照らし合わせつつなら、芭蕉の短冊を読めるようになりました。
なぜ、私が明治期までの歌人、文学者たちの文字を、今と変わらぬ日本語でありながら、まったく読めなかったか、読める喜びを知らずにいたのか、断絶はどこにあったのか、ようやく知りえたこと、変体仮名について、次回は記します。
☆ お知らせ ☆
『詩集 こころうた こころ絵ほん』を2012年
3月11日、
イーフェニックスから発売しました。A5判並製192頁、定価2000円(消費税別途)しました。
イメージング動画(詩・高畑耕治、絵・渡邉裕美、装丁・池乃大、企画制作イーフェニックス・池田智子)はこちらです。絵と音楽と詩の響きあいをぜひご覧ください。
こだまのこだま 動画 ☆ 全国の書店でご注文頂けます(書店のネット注文でも扱われています)。
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詩集 こころうた こころ絵ほん ☆
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