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私の「破調」。破れて裂けて砕けて。

 前回は、若山牧水の歌集を通して、短歌とその「破調」について考えました。今回はこのことをもう少し私自身と私の創作、作品に引きつけ突っ込んで考え、詩想を記してみます。

 牧水の「破調」の歌を読んで私は、短歌は「破調」して自由詩を生み、自由詩は「破調」してアフォリズムを生むのだと思いました。
 これはどの詩形が優れているという比較ではありません。詩人はそのときその形でしか生めない、作品はそのときそのかたちでしか生まれない、のだと思います。

 口語自由詩は短歌では考えられないほど詩形の約束事のまったくないようにみえますが、柔軟な調べ、音色、リズムを詩行、詩作品ごとに織りこみ織りあげることで言葉の音楽を奏でている詩歌です。
 自由詩の詩行を織りあげる推敲作業は、構築した虚構を通して詩想をより繊細に伝えようとする努力だと私は考えています。

 ですから私は経験的に、心があまりに、破れ、壊れたときや、その破れ壊れた心を投げだすしかないとき、また、想念そのものをゆがめたくないときには、詩行の音楽や虚構の構築は、「わずらわしい嘘の行為」に感じられて、詩想があふれ流れるままのアフォリズムの形こそ、想念にふさわしいのではないかと思っています。
 たとえばパスカルの『パンセ』ニーチェの言葉はあの姿こそふさわしいですし、私の第一作品集『死と生の交わり』はそのようなアフォリズムの形で生れた詩想を最低限の形ある調べとした詩想集です。

 和歌も短歌も愛している私が、その定型の詩歌を生めないのは、私の心が定型におさめるには「破れすぎている」からだと思います。破れ、壊れた私の詩心は、定型では生れてくれません。
 私は意志して、破れた心を修復し、アフォリズムの種を、詩想として芽吹かせ、自由な詩の形の花として咲かせようとしてきました。
 私の『海にゆれる』以降の詩集『愛(かな)』、『愛のうたの絵ほん』、『さようなら』はいずれも、自由詩を意志して創作し、種から詩想が自由詩を望んで芽吹いた詩の花です。

 牧水は歌集『みなかみ』の「破調」の作品群の創作時期の後、定型音数律の短歌に戻り、生涯短歌を書き続けました。心の破れを修復できた彼の本来の詩心は、定型をのびやかに楽しめる穏やかなものだったような気が私にはします。
 彼に比べると与謝野晶子はもっと「破れていた」から詩も童謡も評論も書いたのだし、彼とは対照的に石川啄木の心は生涯「壊れていた」からこそ、さまざまな詩形の表情の詩歌の花を咲かせたのだと、私には思えます。
 このように考えてみると、萩原朔太郎、宮澤賢治、高村光太郎、原民喜、一人一人とても豊かな詩形、不思議な表情の花を咲かせていることに思い当ります。
 心が「砕けていた」からこそ、まばゆく散乱してゆく夢の、願いの、愛の花を咲かせてくれたのだと思います。
 
  大海(おほうみ)の 磯もとどろに 寄する波 破(わ)れて砕けて 裂けて散るかも
                                         源実朝『金槐(きんかい)和歌集』(新潮日本古典集成)

 『こころうたこころ絵ほん』というへんてこりんな詩集らしくない作品集が生まれ、詩らしくない作品を創作し、このようなブログを書き、波の花になりたいとねがう私の心に、彼らはとても近しいです。
 ☆ お知らせ ☆
 『詩集 こころうた こころ絵ほん』を2012年3月11日イーフェニックスから発売しました。A5判並製192頁、定価2000円(消費税別途)しました。
 イメージング動画(詩・高畑耕治、絵・渡邉裕美、装丁・池乃大、企画制作イーフェニックス・池田智子)はこちらです。絵と音楽と詩の響きあいをぜひご覧ください。
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プロフィール

高畑耕治

Author:高畑耕治
Profile:たかばたけ こうじ
1963年生まれ大阪・四條畷出身 早大中退 東京・多摩在住

詩集
「銀河、ふりしきる」
2016年イーフェニックス
「こころうた こころ絵ほん」2012年同
「さようなら」1995年土曜美術社出版販売・21世紀詩人叢書25
「愛のうたの絵ほん」1994年同
「愛(かな)」1993年同
「海にゆれる」1991年土曜美術社
「死と生の交わり」1988年批評社

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