新しい詩とうたの本
『こころうた こころ絵ほん』2012年
3月11日発売。 A5版並製192頁。
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発売日にお届けできます。 詩集 こころうた こころ絵ほん 前回に続き、私がこの本を通して作品で伝えたいと願っていることと木魂しあう詩想が書き記されている、試論集をみつめ、私の詩想を共鳴させます。
詩書の出版社コールサック社で精力的に編集、批評、詩活動をされている
詩人、佐相憲一さんの詩論集『21世紀の詩想の港』(2011年12月、コールサック社、2000円)です。
今回は彼の批評の良質性と、詩の本質を捉えている詩人であることがよくわかる、より具体的な三点について記します。
2. 詩人の個性を多面的に感じとる 佐相さんのゆたかな共感力は、個性をみつめる際にも表われていることが、
「21世紀に生きる今野大力」を読むとよくわかります。この批評で彼は、今野大力の現代的魅力として、「社会派でありつつもっているハート、抒情性」、「民族を越えた国際的な連帯の目」、「権力に立ち向かう働く人の立場」、「表現の独自性とユーモア」を、それぞれ作品を通して慈しみ味わいつつ挙げています。詩人の心はゆたかな多様な表情をもっていることを、深く理解した優れた批評だと考えます。
3.こどもの詩に学ぶ 佐相さんは、原発事故後に「詩誌評⑫ いつもおうえん」で、福島の橋本陽子さん発行のこどもたちの詩を集めた詩誌「青い窓」530号の、
ふくしまの小学生の詩をとりあげています。彼はこどもの作品を詩作品として丁寧に鑑賞し批評し、彼らの成長を願い励ましつつ、子どもの詩に学ぶ、と記します。この言葉に私は深く共感します。
詩は、詩人と自称する人や詩界という狭い集団の占有物などではありません。詩心は誰もが持っています。詩としてどのように発芽させるか、その表現方法もひとりひとり違う表情のように、とても多様で豊かなものです。
私もまた、頭でっかちの理知による言語操作だけの詩より、よほど子どもの詩のほうがゆたかで良い詩心を響かせていると、本心で感じ、考えている者です。良い批評です。
4. 女性的なもの、柔らかい詩、優しい詩への共感 「静御前のうたが聴こえてくるまで」で、佐相さんは女性的なものが置かれてきた立場を歴史的に問い直しながら、共鳴する想いを記します。
戦後の詩は硬質なもの、厳しいもの、いわゆる男性的なものだけを現代詩として、柔らかく、体温の伝わる、しみじみした、せつない詩を切り捨ててしまったのは、けして良いことではない。女性的なもの、命を感じとる詩の、現在における重要性を問いかけます。その通りだと私も考えています。
静御前との心の交流を綴る文章はエッセイとしても味わい深く優れています。
佐相さんの詩の批評が、共感力ゆたかな良いものであることが特徴的にわかる四点だけを二回に分けて挙げましたが、これ以外にも詩の豊かさを感じとれる詩想がこの詩論集には波打っています。
詩に対する熱意に満ちたこの本の詩想に共感する人の輪がひろがり、詩の豊かな海へ出航するひとにとっての港となればよい、と私は願う者のひとりです。
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