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藤原定家の研究に想う

「藤原定家の歌風」(赤羽淑、桜楓社)
和歌の調べ。言葉の音楽の美しさの秘密を解き明かす。私もも日本語の詩の創作で心にとめていることなど。定家の歌の雪の美しさの奥深さを、精神の顕微鏡により雪の結晶の映像にまで拡大して見極めようとし変化の無限のまえで立ちすくみつつ歌の美の無限を伝える。

「藤原定家の研究」(石田吉貞、文雅堂書店)
定家の和歌の根底、種子であるものを、頽唐(たいとう)精神とする。頽廃(たいはい)、デカダンスのこと。ボードレールのような。そうだと思う。泥池に白い蓮の花は咲く。投げ込まれた時代の池で人は生きるしかない。海と空のあおに憧れ嫉妬し憎み愛し。
和歌の韻律の美。(319頁)
「としぞふるみるよなよなもかさなりてわれもなきなかゆめかとぞ思ふ(六百番歌合)
あづまやのこやのかりねのかやむしろしくしくほさぬはるさめぞふる(千五百番歌合)
の如きは、次々と相似た音を呼び起して行って、連鎖のような感じを与えている。
これらは勿論、定家が意識的にこのような音の選択や排列をしたものではないであろう。しかし詞の彫琢に苦心し、案じ返し吟じ返ししている間に、自然にこのような音排列ができたものとは考えることができ、定家の鋭敏な音楽的感覚が自ずと作り出した、一つの表現方法であったと言って良い。」
詩を創り詩が生まれでるときには、心と言葉の音楽に耳を澄まして選び選ばれふりそそがれて美の糸が紡ぎだされ織られてゆくことを、石田吉貞の定家の歌の研究のこの個所は、よく捉えていると感じました。
心の言葉、言葉の心。耳を澄ましてしまう人が詩を愛ししる人。
耳を澄ましたとき、西行にはより心の音楽が、定家にはより言葉の音楽が、聞こえてきたのだと思います。
資質、心の在りかた、そうでしかあれない、生き方、願い。

「藤原定家研究増補版」(安田章生、至文堂)
新古今時代の西行などの歌人の個性の感受が新鮮。茶道、能などの芸術と和歌の関りを学ぶ。P558 「詩は、言葉を離れては存在しないものながら、最高の名品というものは、その言葉の美しさをも忘れさせるというような性格を有しているものではあるまいか」
「詩人は人一倍言葉に執心しなければならないが、その執心のほどを作品の上にとどめてはならないものであろう。美しい言葉は、美しいがゆえに彫琢の跡を感じさせないという性格を有しているものであろう。」歌人の著者ならではの良い言葉だと共感します。
定家と、西行、藤原俊成、式子内親王それぞれとの、関り、個性、歌風、生き方の違いと共感について教えられます。引用歌も多く、鑑賞には歌人の著者らしい感受力があるのが良いと思います。四人ともに個性と普遍性ある優れた歌人だと思います。

彼らが生きた時代は、街路に飢餓人が多く権力者の横暴と抗争がくりかえされる時代でしたが、今のこの国、この社会も負けず劣らず酷くなってしまっていると私は思います。
この時代に、式子内親王が帰依した法然、その弟子の親鸞、彼らを罵った日蓮、鎌倉仏教を起こした人は権力に弾圧され流刑にされながらも折れることなく生きぬきました。その宗派を信仰するしないは別として、いのち、社会を凝視した生きざまは、深く尊敬せずにいられません。

「藤原定家」(安東次男、講談社学術文庫)
定家の和歌を選び出しての批評。過去の評釈の引用が多いので教えられる。和歌ごとの批評は独断的だと感じる。和歌はあいまいさ感じ取り方の自由さにこそ本来の良さがある私はと思います。

中世の和歌は、日本の詩歌の山なみの、美しさと悲しみと象徴の極みにあると私は思っています。現在、より近い時間的な過去と、作品の質の高さと作品としての新しさは、別のものです。
芸術の創造性は学びと修行と鍛錬に根ざしたうえでの模索の果てに初めて芽吹くものとわたしは思っています。
現代の詩歌は谷にる危惧をいつも感じ考えています。
現在までつづく詩歌の山なみにあり、読まれ愛されている、例えば俳句の芭蕉や一茶、自由律の放哉や山頭火、詩の金子みすず。その作品は和歌の言葉の調べ、音色とリズム、象徴性を受け継ぎ、息づかせています。こころと言葉が溶け込み織りなす感情と感性、思いの深さと強さと美しさ、感動があります。

心の感動だけが心の感動を呼び起こしてくれると私は感じ思います。
絵は色彩と線と形で。
音楽は声とメロヂィーとリズムで。
詩歌はこころ言葉で。

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プロフィール

高畑耕治

Author:高畑耕治
Profile:たかばたけ こうじ
1963年生まれ大阪・四條畷出身 早大中退 東京・多摩在住

詩集
「銀河、ふりしきる」
2016年イーフェニックス
「こころうた こころ絵ほん」2012年同
「さようなら」1995年土曜美術社出版販売・21世紀詩人叢書25
「愛のうたの絵ほん」1994年同
「愛(かな)」1993年同
「海にゆれる」1991年土曜美術社
「死と生の交わり」1988年批評社

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