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大関松三郎の詩「虫けら」と、子どもの瞳

 前回に続き、『愛の詩歌集』(山本太郎編著、1960年、社会思想社 現代教養文庫284)所収の明治時代、近代詩以降の詩を読んで感じたことを記します。

 今回この期間の収録詩を読み返して、私の心にもっとも強く響いたのは、前回紹介した詩人・会田綱雄の詩「伝説」と、大関松三郎の詩「虫けら」でした。

 この本に記されている略歴によると大関松三郎(おおぜき・まつさぶろう)は、1933年(昭和8年)新潟県古志郡黒条村の小学校に入学、太平洋戦争に海軍志願兵として出征し南海で戦死しています。
 私にこの詩人についての知識がないため、インターネット検索をすると、この詩が収録されている詩集『山芋』がウィキペディア記事にあり、次のように書かれています。

● 以下、ウィキペディア記事『山芋』からの引用。
『山芋』(やまいも)は、教育者寒川道夫が、1932年から勤務していた新潟県古志郡黒条小学校の担任クラスで作っていた学級文集『青い空』を発表場所として、教え子の大関松三郎が書いた詩を解説・指導記録とともにまとめたもの。

 このことを知らずに、私は詩「虫けら」が詩人・会田綱雄の詩「伝説」とともに、最も心打たれる詩でした。
 作者が小学生で教師がまとめた文集の詩であることを知り、私にとって詩「虫けら」が詩「伝説」とともに最も感動する詩であることに少しも変わりはありません。
 詩は、幼心から青少年、壮年、老人まで、年齢をこえて、見つめ聴きとる心に生まれ響く、感動のうたです。いちばんその近くにいて絶えず詩を輝かせているのは子どもの瞳、子どもの心だと、私は思います。


   虫けら

              大関松三郎

一くわ
どっしんとおろして ひっくりかえした土の中から
もぞもぞと いろんな虫けらがでてくる
土の中にかくれていて
あんきにくらしていた虫けらが
おれの一くわで たちまち大さわぎだ
おまえは くそ虫といわれ
おまえは みみずといわれ
おまえは へっこき虫といわれ
おまえは げじげじといわれ
おまえは ありごといわれ
おまえらは 虫けらといわれ
おれは 人間といわれ
おれは 百姓といわれ
おれは くわをもって 土をたがやさねばならん
おれは おまえたちのうちをこわさねばならん
おれは おまえたちの 大将でもないし 敵でもないが
おれは おまえたちを けちらかしたり ころしたりする
おれは こまった
おれは くわをたてて考える

だが虫けらよ
やっぱりおれは土をたがやさんばならんでや
おまえらを けちらかしていかんばならんでや
なあ
虫けらや 虫けらや


 私も小学生のとき、先生がクラス文集を編んでくださいました。毎日配られるガリ版刷りには、クラスメートの日記や詩でいっぱいで、子ども自身が読み上げ発表しました。読むときは緊張したけれど、誇らしく恥ずかしく嬉しい気持ちにみんなの心がときめき、詩が満ちている時間でした。

 私が書き続けている詩が今も生まれてくる泉の源にあるのは、からだと知識が年月ともにどんなに変化しようと、ちっとも成長しない、あの小学校の教室いっぱいに笑い泣いた時間に友だちと伝え合った瞳の輝き、子ども心です。その大切なみんなとの時間から生まれたうたを響かせます。

  詩「河内の子どもやってん」(高畑耕治『詩集こころうた こころ絵ほん』所収)クリックで読めます。
 

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『詩集 こころうた こころ絵ほん』を2012年3月11日イーフェニックスから発売しました。A5判並製192頁、定価2100円(消費税込)です。

 イメージング動画(詩・高畑耕治、絵・渡邉裕美、装丁・池乃大、企画制作イーフェニックス・池田智子)はこちらです。絵と音楽と詩の響きあいをぜひご覧ください。

    こだまのこだま 動画
  
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プロフィール

高畑耕治

Author:高畑耕治
Profile:たかばたけ こうじ
1963年生まれ大阪・四條畷出身 早大中退 東京・多摩在住

詩集
「純心花」
2022年イーフェニックス
「銀河、ふりしきる」
2016年イーフェニックス
「こころうた こころ絵ほん」2012年イーフェニックス
「さようなら」1995年土曜美術社出版販売・21世紀詩人叢書25
「愛のうたの絵ほん」1994年土曜美術社出版販売
「愛(かな)」1993年土曜美術社出版販売
「海にゆれる」1991年土曜美術社
「死と生の交わり」1988年批評社

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