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生田春月の詩。生と死、魂の境界で。

 『日本の詩歌26 近代詩集』(中央公論社、1979年)を読んでいます。これまで出会う機会のなかった良い詩を見つけると私は嬉しくなります。

 今回は、生田春月(いくたしゅんげつ、1892年~1930年)の詩を見つめ感じ考えます。
 二十歳前後に私は彼の詩集を手元にもって読んでいました。彼は昭和五年に自殺しています。その頃私は生と死の境界線上にいたので、彼の言葉は死にひっぱる力として心に刺さりました。今回この本に掲載された詩を読むと。今もまた私の心に響くものがあります。彼の詩「誤植」を紹介します。

  誤植
           生田春月


我が生涯はあはれなる夢、
我れは世界の頁(ページ)の上の一つの誤植なりき。
我れはいかに空(むな)しく世界の著者に
その正誤(しやうご)をば求めけん。
されど誰か否(いな)と云ひ得ん、
この世界自らもまた
あやまれる、無益なる書物なるを。

 この作品を詩と感じるかどうかは、読者次第です。告白に近い言葉です。でもとても強く迫ってくるものがあります。
 この考え、感じとり方が正しいかどうかは、人間にはわからないけれど、世界、宇宙に対しての、否定です。
 この世界、宇宙は間違っている。
 彼はそのように語り、その言葉、考えに殉じるかのように自殺したから、そこに嘘はないと私は思います。嘘がない、真実であることだけが詩だと私は思っています。
 私の心のなかにも、この言葉に強くひっぱられる思いが今もあります。
 けれど、私はそれでも生きたいという思いにかけています。そこにも嘘はないと思います。
 この世界、宇宙は間違っている、かもしれないけれど、生きたい。
 死にたい、けど生きたい。死にたい、だから生きたい。
 その思いは、祈り、信仰とほとんどわけがたいものです。

 私は、生きることを選ぶのなら、生きたいという願い、祈りに、寄り添い、ほんの少しでもこころを温める作品を書こうと誓って書いています。

 いじめ、自殺が絶えません。私の想いを記したエッセイを引用します。
  自殺を思うひとに

 今回記した想いを凝縮した私の詩を木魂させます。

  詩「あどけない星魂の話」(高畑耕治『詩集 こころうた こころ絵ほん』所収)。

 次回はまだ未定です。詩心との出会いを求めて旅しています。


 ☆ お知らせ ☆
『詩集 こころうた こころ絵ほん』を2012年3月11日イーフェニックスから発売しました。A5判並製192頁、定価2100円(消費税込)です。

 イメージング動画(詩・高畑耕治、絵・渡邉裕美、装丁・池乃大、企画制作イーフェニックス・池田智子)はこちらです。絵と音楽と詩の響きあいをぜひご覧ください。

    こだまのこだま 動画
  
 ☆ こちらの本屋さんは店頭に咲かせてくださっています。
 八重洲ブックセンター本店、丸善丸の内本店、書泉グランデ、紀伊国屋書店新宿南店、三省堂書店新宿西口店、早稲田大学生協コーププラザブックセンター、あゆみBOOKS早稲田店、ジュンク堂書店池袋本店、紀伊国屋書店渋谷店、リブロ吉祥寺店、紀伊国屋書店吉祥寺東急店、オリオン書房ノルテ店、オリオン書房ルミネ店、丸善多摩センター店、くまざわ書店桜ケ丘店、有隣堂新百合ヶ丘エルミロード店など。
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プロフィール

高畑耕治

Author:高畑耕治
Profile:たかばたけ こうじ
1963年生まれ大阪・四條畷出身 早大中退 東京・多摩在住

詩集
「純心花」
2022年イーフェニックス
「銀河、ふりしきる」
2016年イーフェニックス
「こころうた こころ絵ほん」2012年イーフェニックス
「さようなら」1995年土曜美術社出版販売・21世紀詩人叢書25
「愛のうたの絵ほん」1994年土曜美術社出版販売
「愛(かな)」1993年土曜美術社出版販売
「海にゆれる」1991年土曜美術社
「死と生の交わり」1988年批評社

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