児童文学作家・牧瀬かおるさんの新しい児童書を紹介します。
『万華鏡の少女』 (牧瀬かおる作、福井かなこ絵、2012年、イーフェニックス) 絵本のように優しく美しい本です。万華鏡をのぞくように期待に心ときめかせて開くと、不思議な心模様が広がります。海辺での女の子たちのお話、万華鏡が時をこえて、心を結んでくれます。
作者は語りかけます。「万華鏡は、同じ模様はありません。
それぞれ違っているからこそ、美しい」、「どんな色でも模様でも自分らしくあれば、人と比べなくてよいのです。それは自分の万華鏡だからです。」、「世界にたったひとつだけの万華鏡、それはあなたなのです」。
このメーセージが、お話を読み進め読み終わったとき、知らないうちに心に沁み込んでいる、そんな素敵なお話です。
作者はこのお話を本にしようとした時、絵がとても好きな親友と本を彩ってもらう約束をされました。その方はその後、闘病のすえお亡くなりになりました。果たせそうにない約束をした作者に、このお話の心を描くのにふさわしい方として、福井適子(ふくいかなこ)さんを紹介されたそうです。
美しい色どりの優しい絵模様が、心に静かに優しく沁みてくるのは、作者の親友への深い
鎮魂の思いが込められているからだと感じます。
だからこの物語のなかの海で亡くなった女の子の悲しみと彼女へ語りかける鎮魂の思いは、東北の震災で亡くなった方々の深い悲しみにまでひろがり溶け合いつつもうとするように感じられて、心が打たれます。悲しみの傍らに寄り添いたいと願う偽りない優しさが私は好きです。
作者と親友の方と福井さんの心の絵、万華鏡の光が織りなす模様が、いのちに優しい息をふきかけ包んでくれるようです。
お話のなかの女の子が、勇気を出して覗いた心の万華鏡は、深い海のように優しい色模様でした。この本にめぐり会えた子どもたちは、きっと
自分らしいたったひとつの万華鏡を見つけて生きてゆける、そう思います。
☆ お知らせ ☆
『詩集 こころうた こころ絵ほん』を2012年
3月11日、
イーフェニックスから発売しました。A5判並製192頁、定価2000円(消費税別途)しました。
イメージング動画(詩・高畑耕治、絵・渡邉裕美、装丁・池乃大、企画制作イーフェニックス・池田智子)はこちらです。絵と音楽と詩の響きあいをぜひご覧ください。
こだまのこだま 動画 ☆ 全国の書店でご注文頂けます(書店のネット注文でも扱われています)。
発売案内『こころうた こころ絵ほん』 ☆
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