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細野幸子の詩(四)。あわゆき。詩。こころ。いのち。

 前回に続き、詩人・細野幸子の詩をみつめます。最終の今回も第3詩集『あの日の風に吹かれて』(2002年、あぜん書房)に咲いている、私がとても好きな詩の花にします。

 このいちりんの小さな花の笑顔に、詩の本質が輝いています。

 詩が感受性から生まれる子どもだとささやいてくれます。
 花びらのような詩句のきらめきに、色彩の鮮やかさ、手触り、舌触り、やわらかさ、冷たいあたたかさ、五感がいっぱいに呼び覚まされます。
 感情の揺れ動きも、風になびく姿のようにとてもゆたかです。こころぜんたいが、不思議になって、驚いて、嬉しくなって、静かに想い、みつめ言葉なくし、ゆらめきます。

「いっしゅん」の想いが溶けてゆくのは、永遠です。
 はかなさを痛いほど感じとる感性は、遥かな永遠にふるえています。

「信じられないほど本もので / いたいほどしんじつなのに」
「ゆめのようにとけて / うそのようにきえた」

 この詩句は、あわゆきを歌いながら、まるで詩を歌っているよう、人のこころ、いのちを歌っているようです。
あわゆき。詩。こころ。いのち。 美しく響き、ひかっています。
 やわらかくやさしくあたたかいひびき。いたいほどしんじつの、うつくしい、こころのことば。
 ゆめのよう、うそのように、はかなく、いっしゅんにきえてしまうから、かけがえのないもの、えいえんのこども。

 「あわゆき」は古事記から歌われ生き続けてきた美しい言葉。

 あわゆきのわかやるむねを。女性の乳房の美しさを歌っています。

 私はあわゆきが好き、詩が好きです。


  あわゆき
           細野幸子


ゆき
ゆき ゆき
本当に
ほんもののゆきだろうか

ふわふわ
さわってみる

キラキラ
みつめてみる

ひやひや
ほおばってみる

つめたさが、からだの芯にジーンとしみて
地球のそこをつきぬけた

信じられないほど本もので
いたいほどしんじつなのに

うれしさのあまりほんのいっしゅん
ひとみをうるませたそのすきに

――どうして?

ゆめのようにとけて
うそのようにきえた


 ☆ お知らせ ☆
『詩集 こころうた こころ絵ほん』を2012年3月11日イーフェニックスから発売しました。A5判並製192頁、定価2000円(消費税別途)しました。

 イメージング動画(詩・高畑耕治、絵・渡邉裕美、装丁・池乃大、企画制作イーフェニックス・池田智子)はこちらです。絵と音楽と詩の響きあいをぜひご覧ください。

    こだまのこだま 動画
  
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プロフィール

高畑耕治

Author:高畑耕治
Profile:たかばたけ こうじ
1963年生まれ大阪・四條畷出身 早大中退 東京・多摩在住

詩集
「純心花」
2022年イーフェニックス
「銀河、ふりしきる」
2016年イーフェニックス
「こころうた こころ絵ほん」2012年イーフェニックス
「さようなら」1995年土曜美術社出版販売・21世紀詩人叢書25
「愛のうたの絵ほん」1994年土曜美術社出版販売
「愛(かな)」1993年土曜美術社出版販売
「海にゆれる」1991年土曜美術社
「死と生の交わり」1988年批評社

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