「学者たちへの論駁3」 セクストス・エンペイリコス(金山弥平・万里子訳、京大学術出版会)。古代懐疑哲学の著者の主著4冊を、20年間かけた金山夫妻の訳業は素晴らしく尊敬します。
彼の主著も訳されていて私は読み手元に置いています。
「論駁3」は自然哲学、倫理哲学が主題で、神、空間時間、生成消滅、善悪と生き方で独断論に立ち向います。
懐疑主義哲学は独断論、ドグマティズムを排してわからないことはわからないと判断保留し、生き方の上でも独断にとらわれた関与を避けます。原始仏教の釈尊の、執着を捨てて目指す涅槃の境地と、通い合うものを私は感じます。
判断保留は、無責任な態度と誤解されがちですが、強制し押しつけ独断する態度よりも、よほど責任ある誠実な人、社会との関わり方だと私は考えます。セクストスも医者でもありながら著作しました。このことも著者の生きる姿勢を伝えているように思います。(ウィキペディアにも良い記事があります)。
古代懐疑主義哲学は素朴に見えて根本的なこと、たとえば宇宙に果てはあるのかないのか、時間は有限か無限か、点、線、面、空間とはなにか。数千年たっても人間にはわからないことだらけだと、謙虚さを呼び覚ましてくれます。
地球温暖化、核兵器、原発廃棄物処理、現代人の多くが独断的に傲慢です。
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