杉山正樹著『やさしいフランス詩法』を読んで感じ考えたことに、少し付け加えたくなったことを書きます。
まず、
「La mer 海、フランスの好きな詩」に中原中也訳で以前咲かせた
ランボーの詩「永遠」の好きな一節を見つけて懐かしく嬉しく感じたので、引用します。
Elle est retrouvée.
Quoi? -L'Éternité.
C'est la mer allée
avec le soleil.
[ɛ-lɛ Rǝ-tRu-ve ]
[kwa le-tɛR-ni-te]
[sɛ-la-mɛ: Ra-le]
[a-vɛk-lǝ-sɔ-l ɛ j]
[RIMBAUD,Vers nouv.et chansons, -L'Éternité v.1~4]
(ここにあったか。何が?―永遠が。太陽とともに行ってしまった海だ。)
もう一点は、このフランス詩法で分かりやすく丁寧に説明されている、
詩句、音節数、句切り、句またぎ、脚韻、詩節、諧調など、詩を作り聴きとるための技法が究めようとするところは、フランス語の個性にきらめく細部の相違は当然ありながらも、
日本語の詩歌の詩法や歌論と通じ合っていて同じだなと、改めて感じたことです。
そのことが凝縮して表れているのは、この本の巻末のつぎの一節です。
●出典引用
「(略)母音も子音も多様に変化、対立しながら、音の表現力とは関係なく、詩句の諧調を形作ることがあります。この音の多様性による諧調こそ本来の意味での諧調といえましょう。(詩原文と発音記号は略)[LAMARTINE,Nouv.médit.,ⅠⅩ.Ischia v.65~68]
(穏かな空から降り注ぐ柔かい光を浴びながら、月がミゼーノ岬のほうに滑るように傾き、曙の光のなかに色あせて見えなくなるまで、ジャスミンの花のしたに座り、わたしたちはいっしょに歌うだろう。)
この4行詩は諧調に富んだ詩句として有名ですが、この比類のない流動的な美しさは母音と子音の巧みな組合せ、強勢音節と無強勢音節の調和のとれた連続から生み出されています。しかし、
ここでは客観的な分析など不可能であり、また不要です。諧調の有無を判断するのは耳だけであり、諧調に富むとされている名詩をできるだけたくさん読んだり聴いたりして、われわれの聴感覚をみがくよりほかに道はありません。」
●引用終わり
詩の音楽、諧調についてのこの著者の言葉は、詩句の本質を捉えていると私は思います。
共感しつつ付け加えるなら、
一番大切なのは詩が好きなこと、心から好きな詩を繰り返し読むこと、誰になんといわれようと自分ではいい、好きだと感じ言い切れる詩を書き繰り返し読んで自分の心の諧調・音楽をしることが、道だと思い私は歩いています。
もうひとつ、音の諧調ととともに、
日本語の独自の個性・魅力である、文字のかたち、ひらがな、漢字、かたかな、記号の組合せと流れも、詩の美しさ、諧調を形作っていることを忘れずに見つめる喜びを感じとることが大切だと思います。
出典:『やさしいフランス詩法』(杉山正樹、1981年、白水社)
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