近代詩が生まれた明治時代からの約百年間に創られた
女性の詩人の詩をみつめなおしています。
『ラ・メール 39号、特集●20世紀女性詩選』(1993年1月、編集発行人:新川和江・吉原幸子、発売:思潮社)に採録されている詩人の一作品・一輪の花たちのなかから、私が好きな、木魂する思いを揺り起こされる詩について、詩想を記しています。
今回の詩人は、
塔和子(とう・かずこ、1929年昭和4年生まれ)です。
略歴には、1944年昭和19年にハンセン病を発病、国立療養所大島青松縁に入園。
詩集『はだか木』『分身』『エバの裔』『第一日の孤独』『聖なるものは木』『いちま人形』他と記されています。
1983年の『いのちの宴』の収録作品です。お名前だけ知っていたこの詩人の略歴と詩に、今回初めて出会いました。
一篇の詩に感じた思いだけを記すことしかできないのですが、詩集のタイトルからも感じるように、いのちをとても深くみつめる眼差しがここにはあります。
雲のかたちを、とらえ、言葉で映し出した、短い作品です。
ただ言葉だけで、この雲に、ひとのいのちそのものになって、空に浮かんでいます。
この詩を読んで私のこころに響く音。
無常。諦念。いのち、ありのまま。
信仰は? わかりません。
『源氏物語』の浮舟などの心象風景に通い合うものを私は感じます。
雲
塔和子意志もなく生まれた
ひとひらの形
形である間
形であらねばならない痛み
風にあおられて
流れる意志もなく流れ
出合った雲と手をつなぎ
意志ではなく
へだてられてゆく距離
叫ぼうと
わめこうと
広い宇宙からは
かえってくる声もない
そして
消える意志もなく
一方的に消される
さびしさを
ただようもの
この作品を読んで、私の作品が木魂しだすのを感じました。空ではなく、海へ目はむけられていますが、おなじ眼差しだと思いました。だからこの詩に私は惹かれるのだと思います。
「
流氷」(
高畑耕治『死と生の交わり』所収)。
次回も女性の詩人の歌声に、心の耳を澄ませます。
☆ お知らせ ☆
『詩集 こころうた こころ絵ほん』を2012年
3月11日、
イーフェニックスから発売しました。A5判並製192頁、定価2000円(消費税別途)しました。
イメージング動画(詩・高畑耕治、絵・渡邉裕美、装丁・池乃大、企画制作イーフェニックス・池田智子)はこちらです。絵と音楽と詩の響きあいをぜひご覧ください。
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