近代詩が生まれた明治時代からの約百年間に創られた
女性の詩人の詩をみつめなおしています。
『ラ・メール 39号、特集●20世紀女性詩選』(1993年1月、編集発行人:新川和江・吉原幸子、発売:思潮社)に採録されている詩人の一作品・一輪の花たちのなかから、私が好きな、木魂する思いを揺り起こされる詩について、詩想を記しています。
今回の詩人は
久坂葉子(くさか・ようこ、1931年昭和6年~1952年昭和27年)です。
略歴は短く、小説を書き芥川賞候補ともなり、シナリオライターとして働き、21歳で自殺、没後
1979年の『久坂葉子詩集』があります。
とても当たり前のことかもしれませんが、私は、小説家も詩人も、作品を生きている時間に書いた、書くことに生きたことを、忘れずにいたいと思っています。
読むことができ、心に伝わり、心ふるえる木魂になれるのは、生きているひとが書いた言葉です。
たとえ遺書であっても。『きけわだつみの声』も死をまえにした生きていた若者たちの言葉。
太宰治の心打つ小説も。
文学作品は眼差しの強さと深さと痛みの鋭さは異なっていても必ず、死を前にした生きている人間の言葉です。
その言葉に込められ響いているものが、他者の心に届きゆらす何かをもたないなら、作品が書かれた後、作者がどのように生きても死んでも、そこに詩はありません。
詩が書かれ生まれるのは、詩人が生きている時間です。たとえ死んでもそこに真実が響いている詩なら、病に倒れても、殺されても、自殺しても、響き続けます。好きな作品の作者が自殺していても、私が好きなのは作者が自殺したからではありません。生きて書いた作品が好きだからです。
ひらがなだけの、七五調の、文語を交えたしずかな調べに、激しさを秘めている、美しい詩です。
白と赤の対比は眩しく、死を見つめる静けさと、愛を思う激しさ、極度の冷たさと熱さの隔たり、張りつめた危うい強い感情が響いていて、私は心をうたれます。
わがこひびとよ
久坂葉子 わがこひびとよ われしなば
しろききぬにて まきたまへ
わがむなもとの きぬの上(へ)に
あかきはなをば のせたまへ
こひのしるしの あかきはな
つみなるこひの しるしにと
わがこひびとよ われしなば
あかきはなのみ あいせかし
次回も女性の詩人の歌声に、心の耳を澄ませます。
☆ お知らせ ☆
『詩集 こころうた こころ絵ほん』を2012年
3月11日、
イーフェニックスから発売しました。A5判並製192頁、定価2000円(消費税別途)しました。
イメージング動画(詩・高畑耕治、絵・渡邉裕美、装丁・池乃大、企画制作イーフェニックス・池田智子)はこちらです。絵と音楽と詩の響きあいをぜひご覧ください。
こだまのこだま 動画 ☆ 全国の書店でご注文頂けます(書店のネット注文でも扱われています)。
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