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八木重吉の詩、好きな3篇

 「詩を想う」で『梁塵秘抄(りょうじんひしょう)』の法文歌(ほうもんのうた)を聴き取りました。日本中世の仏教の祈りの歌です。時代と宗派は異なっても響きあっていると、私が感じ願う、キリスト教信者の八木重吉の詩から、私がとくに好きな3篇の詩の花をここに咲かせます。彼は1898年(明治31年)から1927年(昭和2年)30歳までの短い生涯に美しい心の詩を書き遺しました。 第一詩集『秋の瞳』から2篇。「うつくしいもの」...

『梁塵秘抄』日本中世の祈りの歌

 中世日本の民衆の心の歌『梁塵秘抄(りょうじんひしょう)』から響きだす祈り、「法文歌(ほうもんのうた)」から、私の心に沁みてあふれるような好きな歌をここに咲かせます。 歌謡は、知識の厳密さを極めるものではないので、訳はつけません。なんとなく伝わってくる、感じてしまうもののほうが、歌っている人の心を、より伝えることってあるからです。(22)釈迦(しやか)の 正覚(しやうがく)成ることはこのたび初めと思...

『梁塵秘抄』(三)法文歌、中世の讃美歌

 中世に咲いた歌謡、『梁塵秘抄』の今様のうち、「四句神歌(しくのかみうた)・雑(ぞう)」に集められた民衆の心の歌に前回は耳を澄ませました。 今回は、心のより深い低音部から紡ぎだされた仏教信仰の歌、「法文歌(ほうもんのうた)」を聴きとります。学んだ三つの出典から心に響いた言葉 を紡いで記します。 私は大阪育ちですので幼少期から奈良や京都の寺院を訪ねる機会は多くて親しみも感じてきました。 でも今回法文歌にふ...

『梁塵秘抄』(二)中世民衆の心の歌

 中世の歌謡、今様の花園『梁塵秘抄(りょうじんひしょう)』を感じとろうとしています。この歌謡集はおおきく、中世の民衆の心の咲き匂う園である「四句神歌(しくのかみうた)の雑(ぞう)」と、中世信仰の園である 「法文歌(ほうもんのうた)」にわかれています。どちらも心の豊かな深みからの歌声の魅力を、異なった表情で湛えています。まず今回は、「四句神歌(しくのかみうた)の雑(ぞう)」を聴きとります。 「四句神...

ブログタイトルの変更。『愛(かな)しい詩歌』に。

このブログのタイトルを8月中旬より、『愛(かな)しい詩歌・高畑耕治の詩想』に変更しました。(URLに変更はありませんのでこれまで通りご覧頂けます)。それまではホームページと同じ『愛のうたの絵ほん・高畑耕治の詩と詩集』のタイトルでした。タイトル変更の理由は、このブログではエッセイを、ホームページ『愛のうたの絵ほん・高畑耕治の詩と詩集』では詩作品を、主な内容として分けて公開していることを、わかりやすくする...

新しい詩「こころ絵ほん(ご)おがわのこども」を公開しました

 ホームページ『愛のうたの絵ほん』の「虹・新しい詩」に、新しい詩「こころ絵ほん(ご)おがわのこども」を公開しました。詩「こころ絵ほん(ご)おがわのこども」お読みいただけると、とても嬉しく思います。...

「メリーのブログ」をリンクしました

 このブログのリンクに、「メリーのブログ」をリンクしました。  私の第一作品集『死と生の交わり』についての思い入れと懐疑と問い続けについて以前次のブログに記しました。   自殺を思うひとに 私の心にずっとあるこれらの思いに、偶然出会うことのできた「メリーのブログ」に記されていた、心を込めて書いてくださった言葉は「大丈夫」と、そっとささやいてくださいました。とても私を励ましてくださいました。   お...

『梁塵秘抄』(一)今様、中世の歌謡

 古代から今この時まで絶え間なく流れている詩歌の豊かさをみつめるとき、ふしにのせ声にして謡う歌謡と、文字に書き詠む和歌は、交わったり時に離れたりしながらも、いつも寄り添うさざなみでした。古代歌謡、神楽歌(かぐらうた)、催馬楽(さいばら)につづき生まれ出た歌謡をみつめていきます。今回から数回、平安末期から鎌倉初期の激動の時代に後白河院が執念で書き留め伝えようとした、今様(いまよう)と呼ばれる歌謡をあつめた...

詩と、終戦であり続けさせること

 戦争を通して国や組織は、普通に生活している人を加害者にも被害者にもしてしまいます。そのような状況に個人の力では抗えずに巻き込まれてしまうということでは、開戦という最悪の選択しかできず、他の方策で踏みとどめえなかった無能で傲慢な一握りの為政者と軍人をのぞいた、ひとりひとりの市民、生活者は被害者です。 愚かな戦争を繰り返さないために、繰り返させないために、私も私にできうることをしたいと願っています。...

絶望と祈り。原民喜

 私が原民喜に惹かれるのは、詩人、作家として心から敬愛し、また感性に似通うものをかんじるからですが、他の影響もあります。 そのひとつは、母の故郷が島根県の広島県との県境に近い中国山地の真ん中なので、幼年期に広島を経由して汽車の旅をした夏休みの思い出です。 広島に原爆が落ちた日、その雲を見たと叔父に聞きました。原爆ドームを何度も見ました。祖母も母もあの時原爆のすぐ隣にいたことは心から離れません。 も...

原民喜『鎮魂歌』

 私は詩は感動だと思っています。喜び、悲しみに、心を打たれ、言葉と共に心ふるわせ生きる時間だと思っています。愛しあう喜びの歌が心から好きですが、いのちのありのままの顔かたちをみつめる歌にも心ふるえます。 私が創作に生きようと思い定めながら苦しく彷徨っていた時、私にとっての導きの星は、原民喜の『鎮魂歌』でした。彼のこの作品は、ふつう思われている小説の形、詩の形からもはみ出しているけれど、私にとって今...

『長崎の鐘』と原民喜

 長崎の被爆の惨状と命を助けようとする医師の格闘を描き伝える、永井隆の『長崎の鐘』に、わたしもまた強く心を打たれた一人です。 永井隆の命をかけた言葉が伝わることを、原民喜も強く願いました。二人の言葉、祈りを心に刻み、忘れずに生きたいと私は願います。永井隆「原子野に泣く浦上人は世界にむかつて叫ぶ、戦争をやめよ。」原民喜「恐ろしいのは多くの人々がまだ原子力の惨禍をほんとに鋭く感じとることが出来ないとい...

原民喜。悲しみと祈りの詩

 原民喜の詩から、私がとても好きな詩7篇をここに咲かせます。 心に響き、心打たれ、あらわれる思いにつつまれる美しい詩です。彼のこれらの詩は、わたしにとっての詩の、ある理想の姿です。私の心に刺さり忘れらずいつか心の一部となった詩句が愛しく光りかけてくれます。 1945年8月6日ヒロシマの人たちとともに曝された惨劇を彼は、『原爆小景』の「コレガ人間ナノデス」、「水ヲ下サイ」などの連作詩として描き留め伝えまし...

紫式部のまっすぐな歌『紫式部集』

 『紫式部集』から彼女らしさを感じる歌を選び出しました。 ゆたかな歌物語『源氏物語』に織り込められた創作歌794首は除いた、彼女の自選だとみなされている、約百数十首の私家集です。ここには七首のみ選びましたが、彼女の歌の特徴が現れていると思います。 彼女の和歌は、まっすぐです。ストレートに思いを綴っています。心のみ見つめた内省そのものの歌もあります。 基調音は悲哀の情感です。いのちの憂さと悲しみに揺れ...

新しい詩「さようならこんにちは」を公開しました

 ホームページの「虹・新しい詩」に、詩作品「さようならこんにちは」を公開しました。詩「さようならこんにちは」 この詩は、7月28日発売の『命が危ない 311人詩集 ―いま共にふみだすために―』(コールサック社)へ参加している作品です。お読みいただけると、とても嬉しく思います。...

Appendix

プロフィール

高畑耕治

Author:高畑耕治
Profile:たかばたけ こうじ
1963年生まれ大阪・四條畷出身 早大中退 東京・多摩在住

詩集
「純心花」
2022年イーフェニックス
「銀河、ふりしきる」
2016年イーフェニックス
「こころうた こころ絵ほん」2012年イーフェニックス
「さようなら」1995年土曜美術社出版販売・21世紀詩人叢書25
「愛のうたの絵ほん」1994年土曜美術社出版販売
「愛(かな)」1993年土曜美術社出版販売
「海にゆれる」1991年土曜美術社
「死と生の交わり」1988年批評社

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