万葉集巻第四、笠女郎カサノイラツメ
我(わ)が宿の夕蔭草(ゆふかげくさ)の白露の消(け)ぬがにもとな思ほゆるかもわが家の庭の夕光に照りはえる草に置く白露のように今にもきえいるばかりに、むしょうにあの方のことが思われる
(角川ソフィア文庫、伊藤博訳)
音とイメージが溶け美しい歌
万葉集巻第四、カサノイラツメ
伊勢の海の磯もとどろに寄する波畏(かしこ)き人に恋ひわたるかも源実朝は万葉集に学んだのでおそらく、この歌の飛沫を心に浴びて素晴らしい歌が生まれたのかと感じました。
大海(おほうみの)磯もとどろに寄する波 破(わ)れて砕けて裂けて散るかも(追記。調べました。)
源実朝の「磯もとどろに寄する波」の歌は、万葉集の笠女郎カサノイラツメの歌の、「本歌取り」ととらえられてきたようです。
万葉集巻第四カサノイラツメ
相思(あひおも)はぬ人を思ふは大寺(おほてら)の餓鬼の後方(しりへ)に額つくごとし(角川ソフィア、伊藤博訳)
私を思ってもくれない。人を思うのは、大寺の餓鬼像[餓鬼道に堕ちた亡者の像]のうしろから地に額ずいて拝むようなものです。
激しい愛憎の歌
万葉集巻第四カサノイラツメ
心ゆも我(あ)は思はずき山川(やまかは)も隔(へだ)たらなくにかく恋ひむとは(角川ソフィア、伊藤博訳)
私はついぞ思ってもみませんでした。山や川を隔てて遠く離れているわけでもないのに、こんなに恋に苦しむことになろうとは。
純な清らかな歌です。
ともにとても良い歌だと思います。
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