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万葉集の好きな歌 (巻四) 安都扉娘子

万葉集巻第四、安都扉娘子アトノトビラヲトメ

み空行く月の光にただ一目相見し人の夢(いめ)にし見ゆる

(角川ソフィア文庫、伊藤博訳)
天空をわたる月の光の中でたった一目だけ見た人、そのお方の姿が夢の中にはっきり見えました。

現か幻か、恋の想いが夢に溶けとても美しい歌
万葉集巻第四710
みそらゆくつきのひかりにただひとめあひみしひとのいめにしみゆる
misorayuku tukinohikarini tadahitome ahimisihitono imenisimiyuru


母音のiイ音が主調音で子音と一体となりミ、ヒ、シと清澄な音を変奏しています。
初句末尾の「ゆくyuku」、最終句末尾の「ゆるyuru」も、静かに響きあっています。
一首全体が音楽的で美しい音色です。
調べの音色が詩想の月の光のイメージのさやけさ、純真な恋の想いと美しく溶け合い心に響き流れます。

安都扉娘子の歌は万葉集にこの一首。

古今集の紀友則の、久方の光のどけき春の日にしづこころなく花の散るらむ、の春の光の母音iイ音の調べと似て、印象の、心象の、象徴の、調べの絵のような、優しく美しい作品です。

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プロフィール

高畑耕治

Author:高畑耕治
Profile:たかばたけ こうじ
1963年生まれ大阪・四條畷出身 早大中退 東京・多摩在住

詩集
「銀河、ふりしきる」
2016年イーフェニックス
「こころうた こころ絵ほん」2012年同
「さようなら」1995年土曜美術社出版販売・21世紀詩人叢書25
「愛のうたの絵ほん」1994年同
「愛(かな)」1993年同
「海にゆれる」1991年土曜美術社
「死と生の交わり」1988年批評社

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