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古代歌謡 ヌナカワヒメとスセリヒメのうた

「古事記歌謡」 「日本書紀歌謡」
(大久保正全訳注、講談社学術文庫)
併読しました。本居宣長などこれまでの訓読、解釈も要所に挙げられ良い本です。
古代歌謡を読み返して学んだこと。
「古事記」のみにある神話のうた、ヤチホコノカミとヌナカワヒメ、彼とスセリヒメの、愛の唱和、それぞれのヒメのうたが美しく良い。
初めて読んだ時から変わらずに好きなうたです。

また、「日本書紀」のみにある万葉時代初期とかさなる時代のうた、聖徳太子の行倒れひとへのうたが良い。
フヒトミツと、斉明天皇と、ナカツオオエミコの、それぞれの挽歌が、心に響く。
和歌がうまれた源にある良いうただと感じました。

ヌナカワヒメとスセリヒメのうたは、若い頃初めて知った時から変わらずに好きですが、次のことを知りました。

「古事記」 (西宮一民校注、新潮古典集成)の注で、出雲神話が源にあることがふれられています。
「風土記」 (角川ソフィア文庫)の出雲風土記に、確かに沼河(ヌナカワ)ヒメの名があって、ヤチホコノカミ(オオクニヌシ)との愛の唱和のうたは、出雲神話に源があるのだと知りました。
大和王権に支配される前の出雲にはとても古く豊かな神話、信仰が息づいていたのだと短く記された風土記の言葉に思います。出雲は独自の神話の世界に繋がっていますが、その他の各地の風土記にも、大和王権に政治的に支配されるずっと前から、各地に根ざした世界観、信仰、文化、生活があったのだと教えられます。

万葉集の、東歌、防人の歌、各地の歌謡、作者未詳歌をより深く感じとりたいので風土記に学びたいと思います。

沼河(ヌナカワ)ヒメ。美しい彼女の歌を。

白き腕(ただむき) あわ雪の 若やる胸を そだたき たたきまながり ま玉手(たまで) 玉手さし枕(ま)き 股長(ももなが)に 寝(い)はなさまむを あやに な恋ひ聞こし ヤチホコノ 神の命(ミコト)「あわ雪」の比喩がとても美しいヌナカワヒメのうたです。
(西宮一民訳)
白い私の腕を あわ雪のような 若やいでいる私の胸を たっぷり愛撫し かわいがり 私の玉のように美しい手を枕にし 脚をのばして お眠りなさいましょうから むやみに 恋しがって 仰せられますな ヤチホコノ 神様よ

「記紀」巻頭のイザナギ、イザナミのミコトの国生み神話も、古事記のヌナカワヒメ、スセリヒメの民謡にねざす歌謡も、産むこと、性愛にストリートで人間を感じ私は好きです。

それに続く人の世の記述のほとんどは、戦争と政争と殺戮と差別だらけで軍歌まじりの歌謡も好きになれず、よいと感じません。
ヤマトタケルの英雄譚では自己犠牲に海に沈む姫にこころ痛みますが、人を騙して平然と殺す征伐者タケルの物語は良いとは感じません。
日本の神話を歴史事実と盲信したり、国家の政略の具とするのは愚かさでしかありません。
伝えられた文化を歪め損なうのではなく、受けとり生かしたいと願います。

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プロフィール

高畑耕治

Author:高畑耕治
Profile:たかばたけ こうじ
1963年生まれ大阪・四條畷出身 早大中退 東京・多摩在住

詩集
「銀河、ふりしきる」
2016年イーフェニックス
「こころうた こころ絵ほん」2012年同
「さようなら」1995年土曜美術社出版販売・21世紀詩人叢書25
「愛のうたの絵ほん」1994年同
「愛(かな)」1993年同
「海にゆれる」1991年土曜美術社
「死と生の交わり」1988年批評社

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