風土記の逸文の浦島伝説は魅力的でした。
「釈日本紀」巻十二「浦嶋子」。(亀ヒメとの約束を忘れウラシマが開けてしまったとき、肉体が年老いたのではなく、玉手)箱に封じ込められていた亀ヒメの魂が飛んで常世に帰って行ってしまった。
そして、恋しさに我慢できず、ヒメと歌を詠みかわした一首に、
神の乙女の遥かからの「私を忘れないで」との歌に返し
子らに恋ひ 朝戸(あさと)を開き 吾(わ)がおれば 常世(とこよ)の浜の 浪の音(と)聞こゆ あなたを恋い慕い、朝の戸を開けて私がいると、あなたがいる常世の浜の浪の音がここにまで聞こえて来る
(角川ソフィア文庫「風土記」下)
常陸国風土記 (角川ソフィア上、中村啓信他)。
童子女(わらわ)松原。
恋の募る想いが歌垣の日に偶然かない喜びにすっかり夜の明けるのを忘れたふたり。朝陽にどうしてよいかわからなくなり、人に見られることが恥ずかしくて二本の松の樹になってしまった。
ギリシア神話のように美しい変身譚です。
勉強と思い読んだ「日本書紀」には、残忍な人物、雄略天皇や武烈天皇が、始皇帝、ネロに劣らぬ悪の限りを尽していたことが記されていて、現代の愚かな首相の愚行に接するような殺伐とした気持ちになりますが、美しい古典、人間の心を表現した文学に救われる思いがします。
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