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万葉集の好きな歌 (巻二) 柿本人麻呂

万葉集、巻第二、相聞。
この長歌と反歌はなんど読んでも心に響きます。柿本人麿。

【長歌 最終部】

夏草の 思ひ萎(しな)えて 偲ふらむ 妹(いも)が門(かど)見む 靡(なび)け この山
(訳)
強い日差しで萎んでしまう夏草のようにしょんぼりして私を偲んでいるであろう、そのいとしい子の門を見たい。邪魔だ、靡いてしまえ、この山よ。

【反歌二首目】

笹(ささ)の葉はみやまもさやにさやげども我れは妹(いも)思ふ別れ来(き)ぬれば
(訳)
笹の葉はみ山全体にさやさやとそよいでいるけれども、私はただ一筋にあの子のことだけを思う。別れて来てしまったので
(伊藤博訳、角川ソフィア文庫)

長歌の海の波のように浮かび沈み繰り返し打ち寄せる大きな鼓動と、反歌の響きと音色の繊細な旋律。
言葉の音楽がイメージ、情景、心象と切り離しがたく一体となった詩作品の美は、宇宙、心の象徴として結晶できることを、人麿の長歌と反歌二首に教えられます。
私が影響され、変わらぬ憧れである歌です。

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プロフィール

高畑耕治

Author:高畑耕治
Profile:たかばたけ こうじ
1963年生まれ大阪・四條畷出身 早大中退 東京・多摩在住

詩集
「純心花」
2022年イーフェニックス
「銀河、ふりしきる」
2016年イーフェニックス
「こころうた こころ絵ほん」2012年イーフェニックス
「さようなら」1995年土曜美術社出版販売・21世紀詩人叢書25
「愛のうたの絵ほん」1994年土曜美術社出版販売
「愛(かな)」1993年土曜美術社出版販売
「海にゆれる」1991年土曜美術社
「死と生の交わり」1988年批評社

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