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細野幸子の詩(三)。愛。願い。歌。

 前回に続き、詩人・細野幸子の詩をみつめます。今回は第3詩集『あの日の風に吹かれて』(2002年、あぜん書房)に咲いている、私がとても好きな詩の花にします。 詩「あの日の風に吹かれて」を私が好きなのは、愛の詩だからです。 「わたしがいちばんつよく愛されていた」という詩句はとても真実で、母親の気持ちですが、子どもの気持ちを感じとることができる母親だけが言葉にできる母親の気持ち、ほとんど「つよく愛しあって...

細野幸子の詩(二)。つばさ雲、かなしみと美。

 前回に続き、詩人・細野幸子の詩をみつめます。今回は第2詩集『三角公園で』(1994年、あぜん書房)に咲いている小さな花です。 短い詩ですが、詩そのもの、純粋な詩を、感じていただけると思います。 頭でっかちの詩人気取り屋や前衛自称の批評屋は、このような純粋な世界を、思春期の少女の夢想に過ぎないとあざ笑うかもしれません。でも、そのような賢く錆びた論理に涸れた思考や嘲笑に、詩心を失ってしまった貧しさを自ら...

細野幸子の詩(一)。詩のハンドベル。

 今回からの4回は、私のとても好きな、大切な詩を書く詩人を見つめ、詩想を記します。 細野幸子(ほその・さちこ)の詩です。彼女は3冊の詩集を出版されていますので、それぞれから、私の好きな花を選びました。 今回は第一詩集『ガラスの椅子』(1990年、北国帯)から、今日の日にふさわしく届けたい詩です。 この作品をお読みいただけたら、私が彼女の詩をどうして好きか、わかっていただける気がします。彼女の詩はどれも、...

崎本恵の詩(三)。詩情の花が目覚め。

 崎本恵(ペンネーム・神谷恵)が今年新しく公開した3詩篇をとおして詩想を記す最終回です。 今回の詩は、とても濃密な詩情が込められています。とてもかなしくやさしく美しい詩世界がたちのぼります。 この詩心にみちた響きが私の心の土に沁み入り宿ってくれたことで、私の心で詩の種が目を覚まし芽吹き花咲き、新しい詩「空の絵本」が生まれました。この木魂、詩心の交感を彼女は祝福してくださいました。 詩と詩が呼び合い...

崎本恵の詩(二)。願いに咲き続ける、花。

今回も崎本恵(ペンネーム・神谷恵)の詩を見つめます。今年、野に芽吹き、咲き、揺れている、もう一輪の美しい花です。 この詩も、読み返してみて、説明はいらないな、と感じます。 彼女の心の社会への眼差しがより強く表現されている作品です。 彼女の詩集『てがみ』の前半部には、社会的な弱者、無視され、軽視され、邪険にあしらわれる者の心の目で、不正と悪を告白し立ち向かう強い意思の響いている作品群があって、十数年...

崎本恵の詩(一)。野に咲き揺れる、美しい花。

 今回からしばらくは私がとても好きな二人の詩人の詩をみつめ詩想を記します。まず三回に分けて崎本恵(ペンネーム・神谷恵)の三篇の詩です。彼女は私の詩集『こころうた こころ絵ほん』に言葉を寄せてくださった方で、ペンネームでの著作として、心うたれる詩集『てがみ』や小説『家郷』をお持ちです。個人文芸誌『糾う(あざな)』でも珠玉の小説を発表されています。 この記事の末尾に未刊詩篇をリンクしましたが、今年の秋...

佐相憲一の詩。ひとと詩が好きな、心からの声。

 今年読むことができた心に残る詩集について前回に続き記します。今回は、詩人・佐相憲一(さそう・けんいち)の詩集『時代の波止場』(2012年12月、コールサック社)です。 彼はコールサック社で編集者としても詩をひろめる仕事で活躍していますが、その姿に一番感じるのは、彼は詩が本当に好きだな、詩を愛するひとが好きだなという思いです。詩人とはこのような人間じゃないかと私は思います。 このことと結びついていますが...

佐川亜紀の詩。やわらかく滋味ある、言葉と行い。

 今回は、心ゆれ願いがふくらむ素晴らしい作品を私のホームページとブログで紹介させて頂いた詩人・佐川亜紀の新しい詩集『押し花』(2012年10月、土曜美術社出版販売)について私が好きな詩を見つめ、詩集に呼び起こされた詩想を記します。 私が選んだ作品は詩集のなかで一番やわらかな言葉で書かれていますが、この詩人の強い個性である抒情性を失わない社会性と国際性と批評性とを、やはり響かせています。 そのうえで、この...

春木節子の詩。創作で一番大切なこと。

 今回は詩人・春木節子(はるき・せつこ)の詩をみつめます。前回紹介したアンソロジー詩集『女性たちの現代詩 日本100人選詩集』(麻生直子編・梧桐書院)の収録作品で、作品出典は北海道新聞です。 略歴には、1952年、東京都生まれ。詩集『巴里通信』(金文社)、『鎧戸』『悦郎君の憂鬱』(共に本多企画)『Nとわたし』(土曜美術社出版販売)。日本現代詩人会会員。詩誌「木々」「馬車」同人。と記されています。 詩人...

麻生直子編 『女性たちの現代詩』 

 前回まで詩詩『ラ・メール』の特集を中心に明治以降の女性の詩人の詩をみつめてきました。 詩は芸術ですので、読者は心の個性とありようにとって「好きか嫌いか」で受けとめ感じとればいいのだと私は思います。 書き手の詩人にも嗜好、好き嫌いがあって当然ですが、排他的にならずに個性による多様性を認め合ってさえいれば、読者が良いと感じるものを選べるので、詩の豊かさは損なわれずにすむと思います。 そのように想いつ...

田川紀久雄の詩(二)。土砂降りの中で。

 前回に続き、詩人・田川紀久雄の『愛するものへ』(2012年11月、漉林書房)から、私の好きな詩を見つめます。 今回の詩「愛する人がいます」は最後に置かれている作品です。 田川さんは詩語りで、宮澤賢治を読み込まれているので自然なことですが、この詩は賢治の「雨ニモマケズ」と木魂しています。ご自身の生き方を通して紡ぎだせた言葉だから、深く響き合っていると思います。 以前とりあげたアンソロジーのなかに井上陽水...

田川紀久雄の詩(一)。苦しみを食べてあげたい。

 今回と次回は、私も参加させて頂いている詩誌『たぶの木』を発行してくださっている詩人・田川紀久雄さんが今年11月にだされた新しい詩集『愛するものへ』(漉林書房)から、私が好きな詩を2篇みつめます。 表紙は画家でもあるご自身の絵「良寛さんと子供たち」(油彩10号)の優しく淡いあおで彩られた野の花のような本です。 あとがきに書かれていらっしゃるように、この本からは詩集という言葉がはずされています。創作と...

久宗睦子の詩。言葉の華をたち昇らせて。

 今回は詩人・久宗睦子(ひさむね・むつこ、1929年生まれ)の詩をみつめます。出典は『新・日本現代詩文庫99 久宗睦子詩集』(2012年、土曜美術社出版販売)です。  詩は、心に根付き咲く言葉の花です。思いは花の姿として再び生まれることで、薄められ忘れられることなく咲き続ける花となります。久宗さんの詩にはこのことを強く意識させる香りがあります。香りに包まれ、はっと気づく私がいます。  詩誌『馬車』を長く主宰し...

久宗睦子さんの詩をHPで紹介しました。

 詩人・久宗睦子(ひさむね・むつこ))さんの詩を、私のホームページ「愛のうたの絵ほん」の「好きな詩・伝えたい花」で紹介しました。  久宗睦子の詩「愛河」「月下香幻想」「水族館で」 (クリックでお読み頂けます)。  私も、おとずれ、みつめ、香りにつつまれ、響きあえる想いに生きたい、と願います。 ☆ お知らせ ☆『詩集 こころうた こころ絵ほん』を2012年3月11日、イーフェニックスから発売しました。A5判並製1...

『現代生活語詩集2012 空と海と大地と』に参加しました。

 『現代生活語詩集2012 空と海と大地と』(全国生活語詩の会・編、2012年10月10日、竹林館)が発売されました。北海道から沖縄まで153名の詩人の作品が話しかけてくれます。 私は大阪で生まれ育ちましたので「Ⅴ 関西」に参加しています。 日本全国をひとり旅するように読み、心にやきつけたいと願っています。 ☆ お知らせ ☆『詩集 こころうた こころ絵ほん』を2012年3月11日、イーフェニックスから発売しました。A5判並製19...

詩のアンソロジー集二冊に想ったこと

 立ち寄った図書館の棚に見つけた二冊の詩のアンソロジー集を読んでみました。 一冊は、『ことばの流星群 *明治・大正・昭和の名詩集』(大岡信・編、2004年、集英社)。1984年日本ペンクラブ編の『愛の詩集 ことばよ花咲け』(集英社)を再編集したものだそうです。 もう一冊は『心の詩集 文藝別冊』(2000年、河出書房新社)です。 今回はこの二冊に感じたことを率直に綴ります。『ことばの流星群』。アカデミックな詩人が...

崎本恵さんのブログ『遠い空へ』をリンクしました。

 私の『詩集 こころうた こころ絵ほん』に言葉を頂いた敬愛する詩人・作家の崎本恵さんのブログ『遠い空へ』を、このブログのリンク集に加えさせて頂きました。 ブログには詩も載せていらっしゃるので、読めることをとても嬉しく感じています。ぜひご覧ください。 ☆ お知らせ ☆『詩集 こころうた こころ絵ほん』を2012年3月11日、イーフェニックスから発売しました。A5判並製192頁、定価2000円(消費税別途)しました。 イメー...

9月15日、田川紀久雄さんと坂井のぶこさんの朗読会です。

 詩人の田川紀久雄さんの詩誌「操車場 詩と評論・第64号」に、私の新しい詩「いま、ここで」を参加・掲載して頂きました。私は紙の手触りが好きですので、手に取り読めて嬉しく思います。 田川紀久雄さんと、詩人の坂井のぶこさんの朗読会「第7回 いのちを語ろう」が今週9月15日(土)に催されます。 時間:午後1時40分開場、開演2時。 場所:東鶴堂ギャラリー(横浜市鶴見、JR鶴見駅徒歩5分、京急鶴見駅徒歩2分、鶴見区鶴見...

光と心の、ただひとつの絵模様。牧瀬かおる 『万華鏡の少女』

 児童文学作家・牧瀬かおるさんの新しい児童書を紹介します。    『万華鏡の少女』 (牧瀬かおる作、福井かなこ絵、2012年、イーフェニックス) 絵本のように優しく美しい本です。万華鏡をのぞくように期待に心ときめかせて開くと、不思議な心模様が広がります。海辺での女の子たちのお話、万華鏡が時をこえて、心を結んでくれます。 作者は語りかけます。「万華鏡は、同じ模様はありません。それぞれ違っているからこそ、...

『脱原発・自然エネルギー218人詩集』に参加しています

 『脱原発・自然エネルギー218人詩集』が、コールサック社から発売されました。 日本語詩と英語詩を合本にし、世界へ発信しようとする強い意思と願いが込められた詩集です。 私も参加しています。 ひとりの読者としても、感じとり、考えたいと思っています。   『脱原発・自然エネルギー218人詩集』(日本語・英語_合体版) ☆ お知らせ ☆『詩集 こころうた こころ絵ほん』を2012年3月11日、イーフェニックスから発売...

詩は花。門田照子『ローランサンの橋』

 詩人の門田照子さんが、とても心に響くエッセイ集『ローランサンの橋』を6月にコールサック社から出版されました。 幼年時代から現在まで生きていらした歩みを、その時々の心で、目線の高さで、細やかに綴っていらっしゃいます。少女時代の福岡大空襲の体験も、その時の少女のままの心で語られていらっしゃって、心打たれました。 私の両親と同じ世代の方ですので、父や母が生きてきた時、今と、どうしようもなく重なり、ああ...

こだまを見つけた。田川紀久雄詩集『いのちとの対話』(二)。

 詩人の田川紀久雄さんが新しい詩集『いのちとの対話』(2012年8月、漉林書房、本体2000円)を出版されました。この詩集に呼び起こされた私の詩想を前回記しました。 今回は、詩人の肉声そのものを聴き取りたいと願います。 すべての本の読み方は読者にゆだねられています。 私にとってこの本は、一篇一篇の詩作品が24篇束ねられた詩集として読書するより、24の詩想の流れ、アフォリズム、想念の24の変奏曲として心で聴きとり...

笑顔で流す涙。田川紀久雄詩集『いのちとの対話』(一)。

 詩人の田川紀久雄さんが新しい詩集『いのちとの対話』(2012年8月、漉林書房、本体2000円)を出版されました。この詩集に呼び起こされた私の詩想を記します。 詩集の表紙は画家でもある田川さんご自身の絵で飾られています。優しい筆遣いとぬくもりある色合いの、哀しい顔の絵です。この詩集そのもののように、微笑みながら泣いていて、美しいと感じます。 詩、という言葉に思い浮かべるものは人によって様々です。言葉により...

田川紀久雄・坂井のぶこ7月14日(土)朗読会のお知らせ

 詩人の田川紀久雄さんと坂井のぶこさんが、朗読会を開かれます。今回は私も参加させて頂き少し読ませて頂く予定です。お近くでご関心をもっていただけましたら、お気軽にお立ち寄りください。第6回いのちを語ろう 日時 2012年7月14日(土)開始14 時より。(開場13時45分)。場所 東鶴堂ギャラリー(鶴見)横浜市鶴見区鶴見中央4‐16‐2 田中ビル3F(JR・鶴見駅より徒歩5分、東急・鶴見駅より徒歩2分)。料金 2000円 予約...

詩人・佐川亜紀さんが私の詩集『さようなら』を紹介くださいました。

 詩人の佐川亜紀さんが、1995年の私の第5詩集『さようなら』の批評をHPに書いてくださいました。    詩誌・詩集のコーナー『高畑耕治詩集 さようなら』 紹介してくださった作品は詩「かずよちゃんのはっさく」。阪神淡路大震災の痛みから生まれた詩です。 選んで頂いた詩、書いて頂いた言葉を読んで、佐川さんがこの詩集に向き合ってお読みくださり、感じとっていただけたことが、複数の収録作品への簡潔な言葉を通して、...

詩と歌詞のこと。「紙風船」と「しゃぼんだま」

 詩人の中村不二夫さんの『現代詩展望Ⅶ』(2012、詩画工房)を読みました。この数年に出版された詩集、詩人を丁寧に読み解かれているので、出会いと発見があり嬉しく思います。 この本を通して私が強く感じたのは詩人と詩作品を、ある時代のわずかな年月の流行や世相、世代や流派に無理やり押し込めて論じるのは、とても無理があって意味がないなという思いです。人との出会いと同じで、一冊一冊、個々の個性と感性がひかる表情豊...

牧瀬かおるさんの児童書に詩を想う

 今回は、児童文学作家・牧瀬かおるさんの2冊の児童書を読むことで心にひろがった詩想を記します。 牧瀬さんは、新しい本『万華鏡の少女』をまもなく2012年7月23日にイーフェニックスからご出版される予定で、私も読むことを楽しみにしているひとりです。 牧瀬さんはお年寄りを訪ねるボランティア活動をされていらして、その際、私の『詩集こころうた こころ絵ほん』を皆さんに朗読してくださいました。とても嬉しく思います。...

坂井のぶこ詩集『浜川崎から』の詩をHPで紹介しました。

 詩人・坂井のぶこさんの詩集『浜川崎から』(2012年、漉林書房)の詩を、私のホームページの「好きな詩・伝えたい花」で紹介しました。  ☆こちらのリンクから、お読み頂けます。  坂井のぶこの詩。詩「浜川崎から(抄)」。 とても良い詩です。ぜひお読みください。 ☆ お知らせ ☆ 『詩集 こころうた こころ絵ほん』を2012年3月11日、イーフェニックスから発売しました。A5判並製192頁、定価2100円(消費税込)です。 イメ...

坂井のぶこ詩集『浜川崎から』。 詩って、ほんとはなんだろ?(七)

 標題のテーマ「詩って、ほんとはなんだろ?」について、今回は詩人・坂井のぶこさんの詩集『浜川崎から』(2012年5月、漉林書房)を感じとりながら考えます。 この詩集は、詩ごとの題名はないので、詩集全体を言葉の花野原とみてもいいと思います。野原から私が好きな心に残る野の花を摘んで花飾りを編み「浜川崎から(抄)」としました。   ☆ リンク:詩「浜川崎から(抄)」 既に十冊以上の詩集を出版されている坂井さん...

詩と詩の木魂。崎本恵『採人点景』

 前回紹介した崎本恵さんの詩「息」、詩「ほたる」、詩「希い」と木魂しあう、私の詩をリンクして響かせます。 ☆ 私の詩の木魂  詩「おやすみなさい」。詩集『愛のうたの絵ほん』から。  詩「ほたる」。詩集『愛(かな)』から。  詩「ねがい」。詩想集『死と生の交わり』から。 次回は、坂井のぶこさんの詩集『浜川崎から』を聞きとります。...

Appendix

プロフィール

高畑耕治

Author:高畑耕治
Profile:たかばたけ こうじ
1963年生まれ大阪・四條畷出身 早大中退 東京・多摩在住

詩集
「純心花」
2022年イーフェニックス
「銀河、ふりしきる」
2016年イーフェニックス
「こころうた こころ絵ほん」2012年イーフェニックス
「さようなら」1995年土曜美術社出版販売・21世紀詩人叢書25
「愛のうたの絵ほん」1994年土曜美術社出版販売
「愛(かな)」1993年土曜美術社出版販売
「海にゆれる」1991年土曜美術社
「死と生の交わり」1988年批評社

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