記事一覧

古代歌謡 ヌナカワヒメとスセリヒメのうた

「古事記歌謡」 「日本書紀歌謡」(大久保正全訳注、講談社学術文庫)併読しました。本居宣長などこれまでの訓読、解釈も要所に挙げられ良い本です。古代歌謡を読み返して学んだこと。「古事記」のみにある神話のうた、ヤチホコノカミとヌナカワヒメ、彼とスセリヒメの、愛の唱和、それぞれのヒメのうたが美しく良い。初めて読んだ時から変わらずに好きなうたです。また、「日本書紀」のみにある万葉時代初期とかさなる時代のうた、...

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『田植草紙』好きな歌(二)

 『田植草紙(たうえぞうし)』は、朝歌から、昼歌、晩歌へと一日の時の流れにのり合せて140の歌で構成され、歌われます。 前回とりあげた10歌に続き、今回は晩歌から10歌をとりあげました。どれも歌謡としての特徴が輝いていて私が好きだと感じる歌です。 出典からの引用のあと、☆印に続けて、私が感じとれた詩想を記します。挽歌二番 (101)山が田を作れば おもしろいものやれ 猿は簓(ささら)擦(す)る 狸(たぬき)鼓(つづみ...

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『田植草紙』好きな歌(一)

 『田植草紙(たうえぞうし)』は、朝歌から、昼歌、晩歌へと一日の時の流れにのり合せて140の歌で構成され、歌われます。田植神事での囃し歌として、中世から歌い継がれ、今も記憶され歌われていることはすごいと私は思います。アイヌ神歌が私はとても好きですが、民族という名を越えて通い合うものはあるのだと感じられることを嬉しく思います。  全体の中から、今回と次回、10歌ずつ20の歌をとりあげました。どれも歌謡とし...

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『田植草紙』豊作の祈りをこめて

 海と時を越えて詩歌の旅をしています。久しぶりに日本に戻ります。 古代からの歌謡と詩歌の豊かな交わりをみつめてきましたが、今回は古くから現在まで歌い継がれている歌謡、民謡をとりあげます。 私の母の郷里は島根県の石見地方ですので、幼少期の夏休みに訪ねた一面の田んぼがひろがり、かえるが夜通し合唱する美しくのどかな心やすらぐ風景が、祖母のほほ笑みにつつまれ心に焼きついています。 ですから、出典の「囃(は...

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「隆達節小歌」、歌謡の運命

 室町小歌の豊かな歌謡の世界を『閑吟集』『宗安小歌集』をとおして聴きとってきました。その流れを受けて生まれた隆達節歌謡を今回はみつめ感じとります。  隆達節歌謡は「洒落た音曲」だと私は感じます。総説に書かれている通り、「海外へ開かれた商港であり、人口数万を擁し、町家と呼ばれる富裕な商人の活躍した経済都市」である堺の空気に響いた、「技巧的で軽みを帯びた洒脱な」歌、十六世紀のころの町衆文化に咲いた花で...

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室町小歌(四)一期は夢よ、ただ狂へ

 室町時代の小歌《こうた》集『閑吟集《かんぎんしゅう》』と『宗安小歌集《そうあんこうたしゅう》』を聴きとってきました。出典は、『新潮日本古典集成 閑吟集 宗安小歌集』の北川忠彦による訳文と解説「室町小歌の世界―俗と雅の交錯」です。 最終の今回は、出典の「うき世賛歌」の章に描き出された、室町小歌を生みだした時代・世相と歌い踊った人たちの心をみつめ考えます。 『閑吟集』で最も有名なよく引用される小歌は...

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『閑吟集』『宗安小歌集』の好きな歌

 室町時代の歌謡の主流だった小歌《こうた》集の『閑吟集《かんぎんしゅう》』と『宗安小歌集《そうあんこうたしゅう》』を聴きとっています。室町小歌の心の表現の新しさについて前回次のように考えました。  ① 庶民の日常の生活での会話、肉声が聞こえ、顔の表情が見えること。(語りかけの語尾の・・・・なう、など)。  ② 和歌に欠けがちだったユーモア、滑稽感、卑俗さといった感情が吐き出された歌があること  ③ それ...

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室町小歌(三)庶民の心と伝統

 室町時代の歌謡の主流だった小歌《こうた》集の『閑吟集《かんぎんしゅう》』と『宗安小歌集《そうあんこうたしゅう》』を聴きとっています。出典は、『新潮日本古典集成 閑吟集 宗安小歌集』の北川忠彦による訳文と解説「室町小歌の世界―俗と雅の交錯」です。出典の言葉と小歌そのものに私が感じとり考えたことを記していきます。 出典著者の北川忠彦がこの室町小歌の解説の標題を「俗と雅の交錯」としたことからもわかるよ...

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『閑吟集』の好きな歌

 室町時代の歌謡の主流だった小歌《こうた》集の『閑吟集《かんぎんしゅう》』と『宗安小歌集《そうあんこうたしゅう》』を聴きとっています。室町小歌の心の表現の新しさについて前回次のように考えました。  ① 庶民の日常の生活での会話、肉声が聞こえ、顔の表情が見えること。(語りかけの語尾の・・・・なう、など)。  ② 和歌に欠けがちだったユーモア、滑稽感、卑俗さといった感情が吐き出された歌があること  ③ それ...

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室町小歌(二)通俗語の短詩の魅力

 前回に続き、室町時代の歌謡の主流だった小歌《こうた》集の『閑吟集《かんぎんしゅう》』と『宗安小歌集《そうあんこうたしゅう》』を聴きとっていきます。出典は、『新潮日本古典集成 閑吟集 宗安小歌集』の北川忠彦による訳文と解説「室町小歌の世界―俗と雅の交錯」です。出典の言葉と小歌そのものに私が感じとり考えることができたことを記していきます。 出典の著者は、室町小歌が歌われていた「旋律を正確に知るという...

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室町小歌(一)閑吟集と宗安小歌集

 詩歌の豊かな流れに交わりあう歌謡を、古代から平安時代末の『梁塵秘抄《りょうじんひしょう》』まで聴きとってきました。続く時代に支流として生まれ本流に注ぎこみ、そのゆらめきをゆたかにしてきた歌謡を、今回から取りあげます。 最初は数回にわたり、室町時代の歌謡の主流だった小歌《こうた》集の『閑吟集《かんぎんしゅう》』と『宗安小歌集《そうあんこうたしゅう》』を聴きとっていきます。出典は、『新潮日本古典集成...

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『梁塵秘抄』日本中世の祈りの歌

 中世日本の民衆の心の歌『梁塵秘抄(りょうじんひしょう)』から響きだす祈り、「法文歌(ほうもんのうた)」から、私の心に沁みてあふれるような好きな歌をここに咲かせます。 歌謡は、知識の厳密さを極めるものではないので、訳はつけません。なんとなく伝わってくる、感じてしまうもののほうが、歌っている人の心を、より伝えることってあるからです。(22)釈迦(しやか)の 正覚(しやうがく)成ることはこのたび初めと思...

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『梁塵秘抄』(三)法文歌、中世の讃美歌

 中世に咲いた歌謡、『梁塵秘抄』の今様のうち、「四句神歌(しくのかみうた)・雑(ぞう)」に集められた民衆の心の歌に前回は耳を澄ませました。 今回は、心のより深い低音部から紡ぎだされた仏教信仰の歌、「法文歌(ほうもんのうた)」を聴きとります。学んだ三つの出典から心に響いた言葉 を紡いで記します。 私は大阪育ちですので幼少期から奈良や京都の寺院を訪ねる機会は多くて親しみも感じてきました。 でも今回法文歌にふ...

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『梁塵秘抄』(二)中世民衆の心の歌

 中世の歌謡、今様の花園『梁塵秘抄(りょうじんひしょう)』を感じとろうとしています。この歌謡集はおおきく、中世の民衆の心の咲き匂う園である「四句神歌(しくのかみうた)の雑(ぞう)」と、中世信仰の園である 「法文歌(ほうもんのうた)」にわかれています。どちらも心の豊かな深みからの歌声の魅力を、異なった表情で湛えています。まず今回は、「四句神歌(しくのかみうた)の雑(ぞう)」を聴きとります。 「四句神...

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『梁塵秘抄』(一)今様、中世の歌謡

 古代から今この時まで絶え間なく流れている詩歌の豊かさをみつめるとき、ふしにのせ声にして謡う歌謡と、文字に書き詠む和歌は、交わったり時に離れたりしながらも、いつも寄り添うさざなみでした。古代歌謡、神楽歌(かぐらうた)、催馬楽(さいばら)につづき生まれ出た歌謡をみつめていきます。今回から数回、平安末期から鎌倉初期の激動の時代に後白河院が執念で書き留め伝えようとした、今様(いまよう)と呼ばれる歌謡をあつめた...

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神楽歌。短歌との別れ。

 詩歌と歌謡の交わりを主題に、古代歌謡の豊かな姿をみつめました。今回は続く時代、『古今和歌集』がまとめられ短歌の規範が確立された時期に生まれた歌謡である神楽歌(かぐらうた)を見つめます。(神楽歌と関係のふかい催馬楽(さいばら)については次回取り上げます。)   私自身が、古代歌謡には親しみを抱いてきましたが、神楽歌と催馬楽については、そのようなものがあった、ということくらいしか知りませんでした。まず...

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古代の物語歌(二) 慈悲の物語歌

 歌謡と詩歌の交わりの視点から古代歌謡を見つめなおしています。今回は最終回として古代の物語歌から、聖徳太子の飢え人についての歌をとりあげ、古代歌謡と和歌について考えます。 この物語歌について、出典著者の土橋寛は次のように述べています。 「片岡山の生き倒れを歌った歌を、宮廷で歌うような場はありえなかったと思われるのであり、(略)とすれば、法隆寺の法要などの折に、この片岡説話が語られるとき、この歌が夷...

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古代の物語歌(一) 悲恋の物語歌

 歌謡と詩歌の交わりの視点から古代歌謡を見つめなおしています。今回と次回は古代の物語歌をとりあげます。今回の物語は古代の同母兄妹の悲恋物語です。☆作品(原文と訳文)天皇崩(かむあが)りまして後、木梨軽太子(きなしのかるのみこのみこと)、日継(ひつぎ)知ろしめすに定まれるを、未だ位に即位(つ)きたまはずありし間(ほど)に、その同母妹(いろも)軽大郎女(かるのおほいらつめ)にたはけて、歌日たまひしく、...

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古代の芸謡(二) 乞食者(ほかいびと)の歌

 歌謡と詩歌の交わりの視点から古代歌謡を見つめなおしています。今回も古代の芸謡を前回に続きとりあげます。ただし宮廷で謡われた専門の語部(かたりべ)による芸謡ではなく、都市の一般の民衆を聴衆とした芸人である乞食者(ほかいびと)が謡った芸謡です。☆作品(原文と訳文)  おし照るや 難波(なには)の小江(をえ)に   蘆(いほ)作り 隠(なま)りて居(を)る   葦蟹(あしがに)を 大君召すと。   何せむ...

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古代の芸謡(一)「神語(かみがたり)」の長歌

 歌謡と詩歌の交わりの視点から古代歌謡を見つめています。記紀歌謡を中心とする古代歌謡のなかで、私がとても好きな歌謡を以前ブログ「古代歌謡。無韻素朴の自由詩。」に咲かせました。 古代歌謡という花々のなかでこの抒情恋愛詩は、次の歌と並んで同じ「芸謡」という丘に咲いています。☆作品(原文と訳文)  八千矛の 神の命(みこと)は  八島国(やしまくに) 妻枕(ま)きかねて、  遠々(とほどほ)し 越(こし)...

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古代の民謡、歌垣の歌

 歌謡と詩歌の交わりの視点から古代歌謡を見つめています。今回から作品そのものから、聴きとります。最初は古代の歌垣で謡われた民謡です。☆作品(原文と訳文)歌垣の歌    霰(あられ)降る 杵島(きしま)が岳(たけ)を 嶮(さが)しみと、  草取りかねて 妹が手を取る〈訳:(霰降る)杵島の岳が嶮しいので、(山に登るのに)草に取りつくことができずに、妹の手を取るよ。〉  高浜(たかはま)に 来寄する浪の ...

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古代歌謡、表現形式の特徴(二)

 歌謡と詩歌の交わりの視点から、古代歌謡をみつめています。今回は出典の小島憲之氏「古代歌謡」をとおし、句数(音数)から表現形式の特徴を考えます。 句数(音数)が奏でる音数律は、明確で厳格な頭韻や脚韻や口語韻の押韻規則をもたない日本語の韻文においては、とても大切なものです。 これまで考えつくされたかのようにも思えたこの主題についての、著者の、歌謡という視点からの、ユーカラや琉球古謡という広く豊かな母...

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古代歌謡、表現形式の特徴(一)

 歌謡と詩歌の交わりの視点から、古代歌謡をみつめています。今回は出典の小島憲之氏「古代歌謡」をとおし、古代歌謡の表現形式の特徴を考えます。  前回、古代歌謡は、「すでに音楽を失った古代の歌謡、換言すれば音楽が歌詞(文学)からは離れている歌謡」だと記しましたが、そのような歌謡をみつめ捉えなおす方法として、著者は、アイヌのユーカラ(Yukar)や琉球八重山古謡ユンタ、おもろさうしなどの、謡われる姿が今に伝...

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古代歌謡、文学の口承と筆録

 歌謡と詩歌の交わりについて、みつめていきます。まず古代歌謡からです。 私の心に強く響く歌謡をとりあげたりしながら、その独立した個性と詩歌との入り混じる重なりを考えていきたいと思っています。 今回から三回は、出典の小島憲之氏「古代歌謡」をもとに古代歌謡の表現の特徴を考えます。続く数回は、古代の民謡、芸謡、物語歌を順にみつめていきます。 歌謡を考える時、小島憲之氏の次の言葉は、古代から現代までどの時...

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芸と芸術と生活の糧と

 私は歌、歌謡もふくめた歌が好きです。今回は芸と芸術と生活の糧について思うままに記します。 歌謡、芸謡曲のいちばんの良さは、楽しさ。悲しんで感情移入した後にも元気になれること、だと思います。 旋律と声が重なり美しく響く、情感のこもった人を思い愛して喜び哀しむ歌が、私はいちばん好きです。心の感性、変えられない顔だちなのかもしれません。私は知の人ではなく情の人だと思います。 歌謡、芸謡曲の歌詞のわかり...

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歌謡と詩歌の交わり

 これまで日本の詩歌を古代から室町時代まで、好きな和歌と歌人を焦点にしてみつめてきました。その後連歌、俳諧という詩歌が形づくられ、和歌も明治の革新期を経て現在へ変遷してきました。その推移に思うことやその時代の好きな詩歌と歌人、詩人については今後記していきいます。 1.歌謡と詩歌 その前に今回からしばらくの間、少し異なった視点のテーマをとりあげたいと思います。 「歌謡と詩歌の交わりの移り変わり」とい...

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プロフィール

高畑耕治

Author:高畑耕治
Profile:たかばたけ こうじ
1963年生まれ大阪・四條畷出身 早大中退 東京・多摩在住

詩集
「銀河、ふりしきる」
2016年イーフェニックス
「こころうた こころ絵ほん」2012年同上
「さようなら」1995年土曜美術社出版販売・21世紀詩人叢書25
「愛のうたの絵ほん」1994年同上
「愛(かな)」1993年同上
「海にゆれる」1991年土曜美術社
「死と生の交わり」1988年批評社

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